音楽療法は近年、医療、福祉、介護などの領域と関係した施設である精神病院、リハビリテーション病院、老人保健施設や老人ホーム、デイケアやデイサービス、または知的障害や発達障害児の施設や支援センターなど、様々な場所で実施されています。
音楽療法の効果は、音楽を聴くことによるリラクゼーション効果やストレスの軽減、歌を歌うことによる身体機能・精神機能の賦活にとどまらず、認知症患者の認知機能の改善や障害を持った方のQOLの向上など多岐にわたります。
今回は音楽療法のやり方やプログラム例についてわかりやすく解説していきます。
音楽療法をスムーズにおこなうためには、導入しやすいやり方とコツがあります。
音楽療法におけるクライアントは、高齢者・子供・大人など様々な年齢層の方々です。障害の程度も、重度から軽度まで様々です。
そのため、クライアントに合わせて、楽曲の選択を変えたり、音楽療法全体の構成を工夫したり、演奏の音量・速度・リズムなどを調整することが必要になります。
また、音楽療法を進めるにあたって音楽療法士の言葉使い、声のトーンやボリューム、クライアントの反応の伺い方などにも配慮が必要になります。
クライアントの健康状態や課題などを、周囲の方々やカルテ等から事前に情報収取をし、クライアント個々の目標を立てていきます。
次に、目標を達成できるようなプログラムを考えていきます。
例えば、
「ふるさとの一番のサビの部分で声を出して歌ってもらう」
「おもちゃのチャチャチャのリズムに合わせてマラカスを鳴らしてもらう」
など、より具体性のあるものを目標を立てると、プログラムを決定しやすくなります。
評価表は身体活動や社会性を細分化し、点数化したものなどを用いることが多いです。音楽療法の際の様子を評価し、各項目に評価した点数を記載します。
また、その時のクライアントの様子や反応、前回との相違点・改善点を具体的に記載していきます。
もとに課題を再考し、再度目標を立て、新たに次回のプログラムを考えていきます。
実践するためのプログラム例と選曲方法のコツをご紹介します。
音楽療法におけるプログラムは、『起承転結』を意識して作成することが重要です。
起は挨拶や自己紹介、それから準備体操や深呼吸などから開始します。次に音楽療法の始まりを意識していただけるような、ゆっくりとした曲を数曲演奏するのがよいです。
承では、盛り上がるような元気のある曲や、早いテンポの曲を演奏をしていきましょう。皆さんで少し声を出してもらったり、合唱を入れてみたりと展開を広げていきます。
転では、楽器の演奏を取り入れたり、皆さんで体を動かしながら踊れるような曲を演奏をしたり変化をつけていきます。
結では、少しずつ音楽療法の終わりを意識してもらいながら進めます。皆さんが知っているしめやかな曲を演奏したり、次回に向けての導入となるような曲を演奏したり声掛けをするも良いかと思います。
最後に挨拶や次回のお知らせ等をアナウンスし、音楽療法を終了とします。
発達障害や自閉症、先天性疾患を持った子供たちに対して、音楽療法は有効な治療法になります。音楽の持つ力は、子供の可能性を大いに引き出す可能性を秘めています。
子供に対しての音楽療法は、体を使って表現したり、小道具やおもちゃを使ったり、合間にクールダウンの意味を込めて絵本の読み聞かせなどを入れたりと、子供を最後まで飽きさせないように工夫が必要になります。
挨拶をしながら、全体の雰囲気やひとりひとりの表情を観察します。始まりの歌では派手な打楽器などの演奏をすると子供もワクワクとした表情になるでしょう。
ピアノの音階に合わせて、発声練習をしていきます。元気の良い曲を1~2曲演奏してみんなで歌います。
タンバリンや鈴、マラカスなどを用いて楽器を演奏します。
演奏に合わせて、体を動かします。
休憩や気持ちを落ち着けるために行います。
最後に演奏する曲は、こどもが大好きな曲を毎回固定で演奏すると、メリハリがついて良いです。子供たちに感想を聞いたり、次回のアナウンスをするのもおすすめです。
挨拶をしながら、全体の雰囲気やひとりひとりの表情を観察します。今日の日付を確認したり、今日は何の日かと紹介したりして場の雰囲気を掴みます。
ゆったりとした曲や和やかな曲を演奏していきます。
事前にリサーチしておいたリクエスト曲などを演奏します。年齢層が広いため、偏らないようにバランスの良く楽曲を組み合わせます。
打楽器などを用いて楽器を演奏します。もともと楽器の経験のある方には、自前の楽器を持ってきてもらうのも良いでしょう。
演奏に合わせて、体を動かします。
演奏の間に少し休憩を入れます。深呼吸をしながら、利用者様の顔色や疲労度を観察します。世間話などで場を和ませたり、落ち着かせたりするのも効果的です。
しめやかな曲を演奏して音楽療法の終わりを演出します。次回のアナウンスや音楽療法の総括的な挨拶をして終了とします。
リハビリテーション病院や療養型病院、デイケアや介護施設などで行われる高齢者に対して行われる音楽療法のプログラム例をご紹介します。
利用者には幅広い年齢層の方や障害の程度も様々なので、多くの方が楽しめるよう楽曲が偏らないような工夫が必要です。
ユーモアを交えつつ挨拶をし、利用者の雰囲気を和ませます。
ゆったりとした曲や、和やかな曲を演奏していきます。
事前にリサーチしておいたリクエスト曲などを演奏します。
季節感のある曲を演奏します。
タンバリンや鈴、マラカスなどを用いて楽器を演奏します。障害などに合わせて、楽器の選択や形状を工夫します。
楽曲の合間に体操をします。首、肩、手、股、膝、足首など順番に動かします。
皆さんが知っているような曲などを演奏し終了とします。最後に次回のアナウンスや挨拶をします。
月ごとに季節の歌を演奏したり、事前に手作りの楽器を作りそれをもって音楽療法に参加してもらうのも、参加の意欲が高まります。
また、認知症の方がいらっしゃる場合は、回想法の要素も取り入れるのも有効です。その方の思い入れのある曲や、奥様との思い出の曲などを演奏に取り入れてみましょう。
音楽療法のやり方やプログラムについてまとめてきました。例で挙げたプログラムのように、年齢層や障害像に合わせて、演奏する曲や全体の構成を考えることが必要になります。
音楽療法は現在でも様々な場所で行われていますし、今後もますます活躍の場が広がっていくと思います。
音楽療法を実際にやってみたい、音楽を通じて様々な方を支援してみたいと思った方は是非、音楽療法士をめざしてみてはいかかでしょうか。
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