音楽レクリエーションとは、音楽を通じて心身の機能向上やQOL向上を目指したレクリエーションのことです。医療機関や介護施設などで実施されており、主に障害者と高齢者を対象におこなわれます。
音楽レクリエーションの具体的実施方法や注意点、音楽レクリエーションによる効果をご紹介致します。また、音楽療法との違いと合わせてご紹介します。
音楽レクリエーションについて詳しく見ていきましょう。
音楽レクリエーションとは音楽を用いた心身機能向上やコミュニケーションを図る活動ですが、その目的は様々です。
1つは参加者の集団活動への参加の促しです。医療や介護施設にいると患者や利用者は孤立しがちですが、集団活動をおこなうことで社会とのつながりを保てます。
2つ目はストレス解消の効果です。実際に声を出して歌うことによりストレスが発散されQOLが向上します。また、能動的な活動だけでなく、受動的に音楽を聴くだけでもリラクゼーションの効果があります。
3つ目は身体的機能の向上です。音楽を用いた運動をおこなうことで楽しく身体機能を維持・向上させることができます。
最後は脳の活性化です。歌詞やレクリエーション導入部分に日付を入れることで見当識が向上し、認知症予防になります。
また、音楽に合わせてカスタネットを叩くなどの課題を入れることにより注意力や判断力向上など脳の活性化が期待されます。
音楽療法は音楽療法士による訓練で個別訓練がメインです。
一方、音楽レクリエーションは主に集団で実施され、音楽療法士以外でも実施可能です。
音楽療法は個別の症状を精査し、症状改善のために細かいプログラムが立てられますが、音楽レクリエーションは誰でも参加できるような内容にすることが一般的です。
音楽レクリエーションを実際におこなうためのプログラムについてご紹介します。
水前寺清子の365歩のマーチに合わせて足踏みをする。
氷川きよしのズンドコ節に合わせて腕を振るなどの運動を行います。
対象者により運動の負荷を調整する必要があります。負荷量の異なる体操をいくつか用意しておくことが理想です。
あまり激しい運動は取り入れず、座ったままでも可能なものを多く実施します。麻痺など不自由がある方には簡易的に実施できる代用の運動を提示すると良いです。
音楽レクリエーションでは腕や足の体操だけでなく、口腔体操を取り入れることもできます。「イ」「ウ」を交互に言って口を動かしたり、舌を出して引っ込める運動、「パ、タ、カ、ラ」と発声する体操などがあり誤嚥予防や発声能力向上につながります。
口腔体操の場合はピアノ伴奏など歌詞の無い曲を流している間に口を動かす体操をおこないます。
歌詞に日付を入れ、今日が何日であったか思い出し、見当識を向上させます。レクリエーション開始時に今日の日付を参加者に問い、答えてもらってから実施します。
例えば、三波春夫さんの「世界の国からこんにちは」の冒頭「西のくにから」を「〇月×日」と日付に置き換えます。また「1970年」をその年に置き換えます。
特定の歌詞の部分で、カスタネットを叩くなどのゲームもあります。特定の歌詞や文字が出てきたタイミングで、楽器を鳴らしてもらいます。歌詞に赤や青で〇を付けるなどして、赤の時だけ鳴らしてもらいます。
また、何日か実施したら今度は青の〇で鳴らすなど課題を変えることで注意力向上にもつながります。
楽器は何種類か用意します。カスタネットの場合、両手が自由に動かせる人でなければ使いこなせません。片手のみの場合や、複雑な動作が困難な場合はマラカスなど少し動かしただけで音が出るようなものが適しています。
マラカスはペットボトルにお米を入れるなど簡単に作れます。
身体的不自由により、明らかに適していない楽器を渡すと自尊心が傷つく可能性があるため、注意が必要です。トーンチャイムやメロディベルを用いればみんなで曲を演奏することも可能です。
この場合、音を出すタイミングを上手く指示すれば、体が不自由な方でも演奏に参加でき、自己肯定感が増します。
音楽レクリエーションをスムーズに進めていくためポイには、おさえておきたいポイントがいくつかあります。
有名な歌であっても、歌詞を用意した方が親切です。高齢の方は小さな文字が見にくいため、大きな文字で提示します。
できれば、パソコンで打った文字ではなく手書きの文字の方が温かみがありレクリエーションをより楽しんでもらえます。歌詞を見ながら歌ってもらう時には、歌詞を指示棒などで指しながら歌うとわかりやすくなります。
知っている曲を選曲することは大切ですが、子供向けの曲を嫌がる方もいます。参加者の意向に沿いながら、流行した歌などを中心に選曲した方が良いでしょう。
曲は毎日変えるのではなく、最低でも1週間は同じものを使います。
また、季節に合った曲を提示することにより見当識向上に役立ちます。歌い始める前に、歌手の名前やその当時の様子などを話してもらい回想法を取り入れることもできます。
楽器を演奏する場合でも、曲に合わせて運動する場合でも見本を提示した方が伝わりやすいです。最低でも1人は前に出て実際の動きを見せると親切です。
また、すべての人が立って運動できるわけではありません。立っている場合と座っている場合で分けて提示すると良いです。見本は動画に撮って映像を流す方法もあります。
特に介助を要する方にはマンツーマンでタイミングを指示してあげると成功し易くなります。
音楽レクリエーションに抵抗がある方でも、毎日同じような流れに沿って実施していれば参加する敷居は低くなります。積極的な参加を促すためにも大まかな流れを作っておくことは大切です。
また、歌から運動の体形に広がる際にもスムーズに動くことができることや、何をすれば良いのか伝わりやすくなるためプログラムは重要です。
音楽レクリエーションは能動的になることでより多くの参加意義が出てきます。よって、参加者の発言や行動が出やすいように促していくことも大切です。
施設や病院には失語症や認知症などにより円滑な意思疎通が困難な方がいらっしゃいます。
このような方達でも歌を歌うことができることがあります。認知症で判断力が低下している方は普通の会話では適切な返答ができなくても曲が流れてくると自然と口ずさむことがあります。
失語症の方は言葉としては出てこないけれど、歌となると口から出ることがあります。
これは音楽により感情に変化が現れたり、大脳の言語野とは別の回路が働いていると考えられます。
よって、普段喋れない方にも音楽レクリエーションの参加を通じてコミュニケーションを図ることも重要です。
音楽レクリエーションは、障害者や高齢者の心身機能向上やQOL向上を目的とした活動です。
認知症予防やストレス解消なども期待できます。音楽療法士だけでなく誰でも実施可能であり、集団で実施します。
歌だけでなく簡単な楽器などを用いながら体を動かします。実施者は前に立ち、見本を提示することにより参加者が運動しやすくなります。
音楽レクリエーションにおいて最も大切なことは楽しむことです。実施者が楽しむことで参加者も楽しい時間を過ごすことができます。
限られた環境の中で自己を表現したり、楽しく意思疎通する機会はあまり多くありません。音楽を通して日々の楽しみを提供することは、とても大切な役割といえるのです。
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