これから資格を取りたいと考えている方のほかにも、医療施設や児童発達支援施設にお勤めで、子どもに対する音楽療法に関心がある、発達障害や精神障害をお持ちのお子さんの関係者である方も多くいらっしゃるかと思います。
音楽理法は、心身に障害を抱えた子どもにとって成長や療育には欠かせないものです。
今回は、音楽療法が子どもに対してどのような目的で行われているのか、どのような効果があるのかについてご紹介していきます。
まず、音楽療法とはどんなものなのか、簡単にご紹介します。
音楽療法とは、主に身体・精神に障害を持っている方々に対し、音楽を聴いて頂く・演奏をして頂くことにより、心身にリラクゼーション効果を与える療法です。
第二次世界大戦後のアメリカで戦時中に身体的・精神的な傷を追った方々に適応し、有用な効果を発揮したことから発展しました。
日本での音楽療法は、近年、医療機関や介護施設、児童発達支援施設などで積極的に取り入れていく姿勢がみられています。
しかし、全国的にはまだ発展途中であり、どこの医療関連施設でも取り入れられているわけではないのが現状です。
子どもに対しての音楽療法について、詳しくみていきましょう。
音楽療法は、言葉を有しない療法です。取得した単語数が少なく、上手く言葉を発する事が出来ない子どもにとって、非常に受け入れの良い療法といえます。
子どもに対する音楽療法は様々シーンでおこなわれています。
入院中である子どもの心は非常にデリケートです。なぜなら、大人とは違い自分の感情を表出することができません。大人であれば、言葉、身振り、手振りを使用して相手に対して感情を伝える術がありますが、子どもはそれが出来ないのです。
本来、子どもは多くの外部刺激や常に生活を共にする人の影響を強く受け、言葉や動作を覚え成長していきます。
しかし、病院では治療が中心となりますので、特定の方とのコミュニケーションや、外部からの刺激がほとんどなくなってしまいます。
そこで、音楽療法がとても有効な手段として使用されます。
集団で行うレクリエーション型の音楽療法では、同年代の他の子どもとふれ合うことができます。他者とのふれあいは、子どもの成長にとって大変重要なことです。
それに加え、音楽療法は「一緒に何かを成し遂げる」、「目的の為に努力をする」など、忍耐力や達成感を知るきっかけにもなります。そのことにより、孤独からの開放を感じ心身に良い影響を与えます。
心身に障害をもつ子どもの中には、外部との交流を遮断する方もいます。心身に傷を負い、自己表現が出来ずに苦しむ子どもに対しては個別的な療法を実施します。
先程、「子どもの成長には他者とのふれあいが必要」と述べましたが、全ての子どもがふれあえるわけではありません。そのような場合は、集団ではなく、音楽療法士がマンツーマンで療法を行い、心身状態の安定化を図ります。
音楽療法が子どもの療育にもたらす影響や効果についてご紹介します。
発達障害には、自閉症やアスペルガー症候群、注意多動性障害などが該当します。
しかし、「発達障害」とひとくくりにしてはなりません。それぞれの疾患の特徴や個人の性格、個人を取り巻く環境により、音楽療法のやり方は変わってきます。
例えば、自閉症を持つ子どもの多くは、集団での作業や大きな音を嫌います。その為、集団での音楽療法に参加出来るかどうか、個性を理解しながら判断していく必要があります。
注意多動性障害を持つ子どもは、集中力が続かないために、ひとつの動作を繰り返し行ったり、話を長時間聞いていることができません。そこで音楽療法を用い、楽しみながら動作をすることで今まで注意が反れ、出来なかったことが可能になるようになります。
近年、発達障害を有する子どもに対し、療育として音楽療法を取り入れる医療機関が増加しています。疾患や治療法を理解したプロが症状に応じたプログラムを立て、治療を行います。
では、発達障害を有する子どもに音楽療法ができることにはどのようなことがあるのでしょうか。
疾患や症状に合わせ個別療法・集団療法を実施し、コミュニケーションの充実化や社会性の向上を図っていきます。
また、音楽療法を通じて心身発達をサポートします。
例えば、音に合わせて声を出すとお腹を使い筋力強化に繋がります。
「音が流れたら手をあげて下さい」
と指示がでれば、その時まで待つということを覚えます。
五感とは、視覚・嗅覚・聴覚・味覚・触覚のことです。音楽療法では、音楽を聴く・音に合わせて動く・楽器を触る・真似をするなど、五感を統合して行います。
物を触って「これは持つものである」、音を聴いて「音楽が聞こえる」、対象を見て「真似をする 」など、子どもの成長に欠かせない五感の発達を促しています。
実際の音楽療法のプログラムと客の選び方などをご紹介していきましょう。
発達状況に応じ、子ども向けの曲として、童謡・アニメ関連の曲・ディズニーの曲などを使うことがあります。
代表的なもので、「メリーさんのひつじ」や「きらきら星」「かえるのうた」などが挙げられます。
同じ単語やフレーズを繰り返すことの多い童謡は、子どもにとって非常に親しみやすいものとなります。
また、楽器を用いての演奏も行いやすく、笛担当・鈴担当・歌担当など集団で行うのに適しています。
曲中にでてくる単語数が少ないため、子どもにとって覚えやすいのです。
代表的なものは「サザエさん一家」や「崖の上のポニョ」などが挙げられます。
「アニメや映画を観る」ということは、子どもにとって集中力や表現力、感情発達において重要な役割を果たします。
そのなかでのテーマ曲や挿入曲は、とても記憶に残りやすい為、子ども達も映画の内容を思い出しながら音楽を聴く・歌うことができます。
代表的なものでは「ミッキーマウスマーチ」や「エレクトリカルパレードのテーマソング」が挙げられます。
ディズニー関連の曲は、明るく自然と体が動きだすような曲調が多いため子どもたちの感性を磨くのに役立ちます。
音楽療法士は、子どもの発達状態に応じて曲の種類やプログラムを決めていきます。ただ、曲を聴くだけではなく、その子の心身状況を踏まえた上で課題を設けます。
例えば、最近他者とのコミュニケーションを覚えた子どもであれば、さらに深いコミュニケーションを取ることが出来るようになることを目的として、「隣の子が笛を吹いたら、その後に一緒に吹いてね」と課題を提供し反応をみます。
また、障害が原因で楽器の操作や歌を歌う事が難しい子どもには、楽しみをイメージさせる曲を提供し、「音楽を楽しむ」ことに重点をあてます。
子どもを対象とした音楽療法は、まだあまり知名度が高くありませんが、積極的に取り入れていく姿勢をみせる医療機関や児童発達支援施設は増えています。
音楽療法を適応することで、他者とのコミュニケーションや自分の役割、五感の発達を促すことが出来ます。
障害の程度や、本人の性格によりプログラムは変わってきますが、童謡・アニメ関連曲・ディズニー関連曲など「元気で明るい」曲を使用して子どもの能力を最大限に引き出していきます。
医療機関や、その他の施設で障害が原因で病室から抜け出せない子ども、自分の感情を表出することが苦手な子どもたちにとって、音楽療法は、生きる上でかけがえのないものであるといえます。
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