私たちの日々の行動には、何かしらの意味があるといわれています。
行動や仕草などの意味について、科学的に研究しているのが行動心理学という学問です。行動心理学を学べば、ビジネスや人間関係にいいメリットをもたらしてくれるでしょう。
そこで今回は、行動心理学を実践的に活用するために「ビジネス」と「恋愛・人間関係」で応用できる効果や法則を紹介します。後半では、行動心理学をより深めるためにおすすめのそのほかの心理学分野や、資格も紹介しているので参考にしてみてください。
行動心理学とは、人間の行動やしぐさ、表情などから相手の心理を読み取る学問です。
人間は無意識に顔を触るときもあれば、意識的に顔を触るときがありますよね。行動心理学では主に、無意識的な人間の行動に注目して、さまざまなことに役立てるための研究を行っています。
大学等の授業では、学習心理学や発達心理学とともに基礎心理学の一分野として扱われている学問です。
まずは、ビジネスシーンで応用できる行動心理学を10個紹介します。
行動心理学はビジネスとの親和性が高く、商品やサービスを販売する際に役立つといわれています。行動心理学の知識をもとに、顧客や顧客になってくれそうな層の行動に注目することで、ビジネスのあらゆる場面に応用できるでしょう。
単純接触効果(ザイオンス効果)とは、繰り返し接触することで好意や親密性が増す効果のことです。
1968年にアメリカの社会心理学者であるザイアンス氏が提唱したことから、「ザイアンス効果」と呼ぶ方もいるそうです。
単純接触効果をビジネスで活かす場合、次のシーンで活用できます。
・営業で商品の良さを伝える
・新商品を紹介する
顧客候補の方が購入したくなるように「触れる」「見る」機会を増やす際に単純接触効果を使用します。売りたい商品を見やすい位置にサンプルを置く、パンフレットの中にチラシを入れる、入り口にポスターを貼るなど、接する機会を増やすと効果的です。
また、営業担当が1回切りではなく数回に分けて訪問することも単純接触効果が発揮されます。その際、ただ訪問するのではなく、ほかの効果も合わせることで、さらに親近感が増すでしょう。
ヴェブレン効果とは、顕示効果とも呼ばれる「誰かに見せたい!」という心理を応用した効果です。
ヴェブレン効果は次のような条件で発揮されます。
・希少価値がある
・社会的に価値が認められている
・商品の価格が高い
・商品の質が高い
近年は高級ブランドに限らず、期間限定品や贅沢品などもヴェブレン効果の条件の対象となっています。
たとえば、「限定5名様の○○を購入できた」など、誰かに自慢したくなる人間の心理を応用した効果がヴェブレン効果です。
マジカルナンバーとは認知心理学の用語ですが、今回はビジネスにも使える点で行動心理学として紹介します。
マジカルナンバーは、人間の短期記憶の上限に関する専門用語です。人間の短期記憶は7±2個であると、1956年に心理学者のミラーが提唱しました。
しかし、2001年にネルソン・コーワン氏が論文で「マジカルナンバー4±1」を提唱しています。最初の研究から50年経過しているので、どちらかが間違えということではなく、人間の変化の結果でもあると考えられます。
ビジネスで応用する場合、アピールポイントを4個程度にとどめることで、すべて記憶に残る可能性が高まるということです。
あれもこれも伝えたい気持ちはわかりますが、「メリットはたくさんありますが、特におすすめのポイントは3つです」と伝えると、顧客の記憶に残りやすいでしょう。
バーナム効果とは、誰にでも当てはまりそうなあいまいな内容を見て、「もしかして私のことかも」と思う人間の心理を応用した効果です。
たとえば、占いなどがわかりやすい例でしょう。「最近、疲れやすいあなたは○○を身に着けると運気が上がるでしょう」という内容が書かれていたとします。日本のようなストレス社会で生きていると、かなりエネルギッシュな人以外は「そうか、○○を買いに行こう」となるのです。
ビジネスで応用する場合は、商品のターゲットやペルソナを定めて、キャッチコピーなどを作る方法があります。
バンドワゴン効果とは、大勢が支持や氷解しているものは、きっと自分にとってもいいものに違いないと思う心理を応用した効果です。
ビジネスで活用する場合は、次のような場面で応用できます。
・広告やキャッチコピーに使う
・レビューをSNSやサイトに掲載する
たとえば、「ご契約者様 ○万人突破」「○○ランキングNo.1」などはバンドワゴン効果を活用した例となります。
レビューの掲載は、コメントやレビュー数が多いこと以外にも、30代女性の購入率を増やしたい場合に少し30代女性の口コミを多めに掲載するなども効果的です。
ドア・インザ・フェイスとは、難題や大きな要求のあとに、本命の小さな要求をすること。あらゆる場面で、交渉術として使われています。
たとえば、営業担当の人がドア・インザ・フェイスを使用する場合の使い方は次の通りです。
本当に購入してほしい「A商品5万円」と、購入してくれたら嬉しい「B商品10万円」を用意。まずは「B商品10万円」を紹介し、お客様の様子を観察して、細かなニーズを伺っていきます。
そこでお客様が「B商品10万円」を購入してくれたら、ラッキーくらいの気持ちでいるとよいでしょう。
お客様が躊躇している様子なら、ニーズや躊躇する理由を踏まえたうえで「A商品5万円」でご紹介します。そうすることで、「A商品5万円」だけを先におすすめするよりも、「A商品5万円」の契約率が上がるのがドア・インザ・フェイスです。
フット・インザ・ドアとは、ドア・インザ・フェイスのある意味で逆の手法となります。
フット・インザ・ドアではまず、簡単な要求や小さな要望を伝え、段階的にレベルを上げていき、最後に本命の大きな要求を提示する方法です。ただし、段階的ではなくても「小さい要求→大きい要求」でも問題ない場面も多く存在します。
ビジネスでよく活用されるシーンは次の通りです。
・サービスのお試し期間
・試供品の提供
・モニター募集
・メルマガやLINE登録
・名刺交換や連絡先の交換
このほかにも、チラシや資料のみ渡すだけの日と、商品説明をする日に分けて段階的にアピールするときにも応用できます。
カリギュラ効果とは、禁止や制限を設けることによって、相手の興味を引き出す方法です。
子どものころ、「○○を触ってはいけません」などと言われて、対象物がとても気になったり、実際に触ってしまって怒られた経験はありませんか?この状況が、まさにカリギュラ効果の結果によるものです。
ビジネスで活用する場合、次の方法でカリギュラ効果が使用できます。
制限を活かした方法
・先着順など
・個数限定や季節限定など
・会員制や紹介制など
禁止を活かした方法
・「閲覧注意」「○○な人は見ない方がいい」など
・「本気で○○したい人だけ見て!」など
・「本当は誰にも教えたくない○○」など
行動の制限や禁止は、逆に気になって仕方がなくなり、顧客の頭から離れなくなるでしょう。
アンカリング効果とは、先に与えられた情報をもとに、最終的な意思決定がされることをいいます。
行動心理学の用語というよりは、行動経済学(心理学×経済学)の専門用語ですが、今回は行動心理学の1つとして紹介しました。
ビジネスでアンカリング効果を活用する場合、次のような方法があります。
・定価を伝えてから、値引き価格を提示する
・通常価格に躊躇しているお客様に「今回は特別に」○%値引きします
・メーカー希望価格と、販売価格を提示する
先に提示した情報の影響を相手がどの程度受けるかを予測することも、提示する際に重要です。
ウィンザー効果とは、当事者が発信するよりも、第三者の情報提供の方が信頼性が高まるという心理効果です。
ビジネスで活用するなら、アンケート結果の紹介や口コミ、利用者インタビュー、レビューなどが該当します。特に近年はSNSの普及によって、公式サイトの情報よりも実際に使っている人の情報を検索する人が増えました。
インフルエンサーに商品を使用してもらい、レビューを書いてもらうこともウィンザー効果を活用したマーケティング手法です。
次に人間関係に使える行動心理学を紹介します。
主に恋愛関係などに応用できる効果や法則となっていますが、ビジネスシーンでも活用できるものばかりです。
返報性の法則とは、自分が行ったことが自分に返ってくるという心理学の用語です。
恋愛など人間関係で応用する場合は、次のような例があります。
・視線を合わせてほほ笑む
・相手の良いところを具体的にほめる
・感謝の言葉を伝える
・相手を大切にする
返報性の法則は「こうしてもらったから、自分もそうしたい」と無意識や意識的に相手が行動する心理を応用しています。しかし、必ず相手に通用するわけではありません。
世の中には「してもらって当然」と捉える人や、相手の好意に気づかない人もいます。返ってこないからといって逆上したり、自分を責めないようにしましょう。
吊り橋効果は恋愛心理学(恋愛×行動心理学)では有名な心理効果かもしれません。
吊り橋効果とは、不安や恐怖、緊張などを感じる場面で、共に過ごした人に対して恋愛感情を抱くという心理効果のこと。心理実験に吊り橋を用いたことから、「吊り橋効果」と名付けられました。
吊り橋に限らず、お化け屋敷やホラー映画、アクション映画、絶叫マシンなども、吊り橋の代わりとなる場所として効果的です。
ほかにも緊張しやすい場面として、プロジェクトで支えてくれた同僚や先輩に恋愛感情を抱くことも吊り橋効果の影響でしょう。
マンネリしているカップルなら、お互いにはじめての場所へ行ったり、普段とは違う待ち合わせ場所や交通手段を使うことで、吊り橋効果が得られる場合があります。
ハロー効果とは、目立つ特徴による印象で、ほかの部分の評価も上がる(もしくは下がる)という心理効果のことです。
先入観や経験則によって、非合理的に判断してしまう現象(認知バイアス)とも関連しています。
恋愛においてハロー効果を応用するなら、次のような方法があります。
・外見を印象付けたい雰囲気に変える
・姿勢を正しくする
・立ち振る舞いをきれいにする
・話し方を意識する
ただし、本当の自分を隠してまでハロー効果を使ってしまうと、いざお付き合いできたときに困る場合があります。
ハロー効果を応用する場合は、未来のことも考えて使いましょう。
アンダーマイニング効果とは、一度与えられたものがあった場合、次からも与えてもらえないと気分が下がる現象のことです。
恋愛においては、「かわいいね」「きれいだね」といつも言ってくれていた人が急に言わなくなったときに、モヤモヤしたり不安になったりすることが当てはまります。
ほかにも、毎回彼が服をほめてくれていたけど、褒められなかった日は1日不機嫌になったり、次からは服選びが適当になったりするのもアンダーマイニング効果の結果です。
与えすぎると相手のテンションが下がるという意味で、自分も気を付ける必要があります。
一方で、相手に褒められたり認められることばかりを求めず、自分の中の動機(内発的動機)も忘れずにいることで、やる気や好奇心が減ることを防げるでしょう。
類似性の法則とは、共通点を見出して、相手に信頼や好意を持ってもらうことで、絆が深まる心理効果のこと。
会話をしているときに「私も!」とか「同じ」「わかる」という言葉を耳にしたことはありませんか?
無意識的に行っている人もいれば、類似性の法則を使っている人もいるでしょう。
・出身地が同じ
・好きなアーティストが同じ
・趣味が共通している
・好みの店が同じ
上記のようなことが当てはまります。さらに、マイナーなものが共通していると効果を高めるようです。
また、共通点がなくても、LINEの返信ペースを同じにしたり、目の前にいるときに仕草を真似ること(ミラー効果)も類似性の法則に当てはまります。
心理効果のほかに、仕草や表情、行動などからわかる深層心理もあります。
ただし、行動心理学は世の中の全員に当てはまるわけではありません。参考にしながら、目の前の人そのものを観察したり、対話をして関係を深めていきましょう。
ここでは、参考になりそうな仕草や行動の代表例を紹介します。
座る位置や、座っているときの姿・仕草などから相手の心理を読み取ることはある程度可能です。
・正面
親密な関係で真剣な話をする際には効果的。
一方で、初対面や関係が浅い人の場合は、正面に座ると緊張感や威圧感を与えかねません。
・隣
相手を独占したい気持ちがあることが多い位置。
いい意味での緊張感や親近感を与えられる座り位置でもあります。
・斜め向かい
緊張感を与えたくない、リラックスして話したいときに効果的。
カジュアルなシーンやこれから親密になっていくときにもいいでしょう。
・浅く腰かける
なるべく早めにこの場を終わらせたい場合に多い座り方。
長時間の外出中の場合は、疲労もしくはトイレに行きたいけど言えない人もいるかもしれません。
・深く座る
リラックスや安心しているときの座り方。
もっと長く居たいときに多いですが、気の強い人や自信家の人にもよくある座り方です。
・足を組む
緊張や警戒のときに多い座り方。
ただし普段から足を組む人は、無意識な状態であるため逆に安心していることもあります。
目線はコントロールしにくい場所であり、深層心理が表れやすいといわれています。
・瞬きが多い
緊張状態の人が多いでしょう。ほかにも、嘘をついているときや動揺しているときにも瞬きをする人はいます。
・斜め上を向いている
考え事や、聞いた話を視覚的にイメージしているときに斜め上を向き人は多いでしょう。
・斜め下を向いている
自分の心や体と対話しているときに、よくある目線です。右下なら身体的イメージ、左下なら自分の心と対話している可能性があります。
・真横に動く
納得していないときや、モヤモヤしていても言語化できないときによくある目線です。
口や鼻、頭などを触る仕草でも相手の心理がわかります。
・口元を隠す
まさに隠し事があるときの仕草でしょう。
ほかにも、自信がない人や自己肯定感の低い人も口元を隠す傾向があります。
・頭をかく
恥ずかしい心理や、照れているときによくある仕草です。
褒めてもお礼や反応がないときは、もしかしたら頭をかいているかもしれません。
・耳を触る
会話に退屈していたり、不満を感じているときにでる仕草です。
ほかにも孤独や不安を抱えている場合や、会話の中から別のことを連想しているときにも起きます。
行動心理学について紹介しました。
しかし、1つの心理学を極めるだけでは相手の心理を読み取り間違えてしまうことがあります。
行動心理学とともに学ぶといい心理学を3つ紹介しますので、気になるものから学習してみてください。
人間や動物たちが生きていく際には、さまざまな経験や体験をしていますよね。
過去の経験や体験に基づいて、行動が変化する過程などを研究数r学問が「学習心理学」です。
たとえば、条件反射などは学習心理学の分野であり、「パブロフの犬」という有名な実験があります。学習心理学を学ぶことで、人間がどのような行動の過程を経て、現在の行動を選択しているかを理解するときに役立ちます。
集団社会における人間の行動や変化に関する研究をしているのが「社会心理学」という学問です。
私たちは自らコミュニティに属していない場合でも、世間という集団も含め、何かしらの集団に属しています。SNSもその1つでしょう。
社会心理学では、時代や社会現象などにより生じる人間の変化などにも注目し、集団の影響を個人がどのように受けるのかなどを研究しています。そのほかにも、集団と集団なども研究の対象です。
人間の記憶や思考、知覚、情動に関する研究を行う学問が「認知心理学」です。
人間が何かしらの行動をしたり、学習していくには「見る」「聴く」「覚える」「考える」「感じる」などが必須でしょう。
認知心理学では、人間の記憶や思考などが、どのような形で活動に影響を及ぼしているのかを研究しています。また、人類の発達や障害などに関心がある人にも注目されている分野です。
最後に行動心理学を仕事や私生活で活用するために、おすすめの資格を4つ紹介します。
・行動心理カウンセラー®
・行動主義心理アドバイザー®
・アンガーコントロール士
・アンガーカウンセラー®
行動心理カウンセラー®や行動主義心理アドバイザー®は、その名称の通り行動心理学の基礎知識を持つ人のための資格です。
アンガーコントロール士やアンガーカウンセラー®は、感情表出や怒りの本質に関する基礎知識を持つ証明となる資格です。人間の行動と感情は切り離せないため、取得しておくと活用しやすくなりますし、セルフコントロールにも役立ちます。
行動心理学について詳しく解説しました。
今回はわかりやすく、ビジネスと人間関係に分けていますが、どの心理効果や法則もさまざまなシーンに応用できます。
ただし、今回紹介した心理が全員に必ず適応するとは限りません。心理効果を仕事や私生活に、上手に用いてみてくださいね。
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