心理学とは、人間の行動や発言、考え方から深層心理を汲み取ったり、科学的に解明して社会に活かす学問です。
心理学を勉強したいと思った人のなかには「どこから勉強すればいいのか」と思う人も少なくありません。
心理学には大きく分けて2種類あり、さらに細かく分けると数多くの「○○心理学」が存在します。そこで今回は、心理学の種類を23個に分けて詳しく解説!心理学の種類について理解を深め、これからの学びに活用してみてください。
心理学は大分類すると「基礎心理学」と「応用心理学」の2種類があります。
まずは大分類に関して、理解を深めていきましょう。
基礎心理学とは、私たち人間の心を扱う心理学のなかでも、基礎的な仕組みを解明する学問の総称です。
人間の心や行動の仕組みを明らかにするためには、土台となる基礎的な心的過程を探求する必要があります。
たとえば、知覚や認知、言語などが該当し、この後紹介する「応用心理学」のもとともなるのです。実験的な心理学の方法論を用いて、法則性を解明する心理学のすべてを「基礎心理学」といいます。
応用心理学とは、基礎心理学をもとに実践的で具体的な活用法を研究する心理学の総称です。
みなさんがよくテレビやネットの解説で耳にする言葉の多くは、応用心理学の用語といわれています。応用心理学は、日常生活に密接した「社会に活かすための心理学」だからです。
わかりやすく、イメージしやすいけれど、専門的な心理学が応用心理学に含まれています。
基礎心理学には、数多くの分野が存在しています。今回は代表的な11種類の基礎心理学の分野をご紹介します。
本や大学の授業によっては「学習・言語心理学」「知覚・認知心理学」など、まとめて表現されていることも多いようです。しかし、今回は細かい種類に分け、1つひとつの心理学の理解を深めていきましょう。
学習心理学の「学習」とは、勉強のことではありません。
学習心理学の「学習」は、経験・体験によって生じる行動の変化・変容を研究する学問です。
たとえば、以前行ったレストランの料理がおいしかったから、「また食べたい」と思って訪れるのは人間の学習の結果による行動といわれています。
学習心理学でおさえてほしいポイントをまとめました。
お腹が空いている犬にエサを見せると、唾液が出るのは生まれつき持っている「無条件反応」です。
しかし、エサを持ってくる人の足音を聞いただけで、唾液が出てくるのは「人が来たからエサがもらえる」という学習の成果であり「条件反応」といわれています。
この一連の学習を「古典的条件づけ」と名付けました。
お腹が空いている猫を、脱出できる仕掛けがある箱(問題箱)に入れました。猫は箱のなかをさまよい、偶然にも仕掛けを発見して外に出られてエサを食べられます。
その後に同様の箱に入れられた猫は、仕掛けに気づくまでの時間が短くなったのです。この一連の行動も学習の成果であり、「オペラント条件付け」と名付けられました。
言語心理学とは、言葉に関した研究を行う学問です。
私たちの心の仕組みは、行動だけでなく、言葉や思考の影響も大きく関係しています。言語心理学の分野は、研究者によって対象や方法にばらつきがあるため「学習心理学」とまとめて学ぶ大学や講座も多いです。
認知心理学とは、人間の認知活動について研究する学問です。
認知活動とは、知覚や思考、記憶、情動、学習、意思決定などの働きのこと。認知活動の働きを解明することが認知心理学の目的です。
たとえば、私たちが情報を得る際には、五感に送られた情報を過去の学習や記憶を使って情報処理します。この学習や記憶が間違っていたら「誤学習」が起き、トラブルなどを招くという仕組みです。
認知活動の内容からも想像できるように、学習心理学やこの後紹介する知覚心理学とも関連の深い学問といわれています。
発達障害や人間の認知の歪みに関心のある人は、ぜひ学んでおいてほしい分野です。
知覚心理学は、認知心理学と関連性の深い学問であり、主に感覚器官を通じた情報処理に関する研究を行っています。
知覚と認知の違いは、捉える課題の難易度です。知覚は目や耳から得た情報など、比較的シンプルでわかりやすいときに生じます。一方の認知は、少し複雑で全般的な機能や学習、記憶、経験などが含まれています。
発達心理学は、私たち人間の生涯の経過や変化に関する研究を深める学問です。
「発達=子ども」「発達=発達障害」とイメージする人も多いですが、一般的には大人も含む成長過程を指します。
しかし、研究者によっては「幼児期」や「思春期・青年期」「老年期」のみを探求している方もいるので、人間の変化や機能、心や身体の問題に関心のある人はまず発達心理学全体を学んでみてはいかがでしょうか。
社会心理学とは、個人が社会のなかでどのように影響され、行動するかを研究する場合と、集団社会そのものの心理を研究する場合があります。
私たちは、一人では生きていけません。社会心理学では、「個人」「家族・友人」「社会・地域」など、さまざまな関わり方のなかで、コミュニケーションやルールを学んでいきます。
近年では、SNSで形成される新たな人間関係に注目している研究者もいるなど、社会心理学は時代に合わせて研究対象が変化しやすい学問です。産業や学校、犯罪心理などに関心のある人は学んでおいた方がいい分野でしょう。
集団心理学は、社会心理学と関連性が深く、人間が集団でいるときにどのような言動の変化が起きるのかに注目する学問です。
たとえば「同調(行動/現象)」は社会心理学や集団心理学の研究対象となります。
クラスや職場内のいじめなどが悪い例としてわかりやすいでしょう。
権力の強い人間や大多数がいじめをしているとき「みんなやってるから」という気持ちが働き、本来の自分の価値観とは違ってもいじめに加担してしまうのは同調の悪い影響です。
しかし、同調にはいい面もあります。集団で協力し合うことで生産性が上がって、チームにいい影響をもたらすのです。このように集団心理学では、社会で起きるさまざまな現象について研究します。
性格心理学とは、人格心理学・パーソナリティ心理学ともいわれ、その人らしさなど「個人」を扱う心理学です。
性格のなかでも、生まれつき持つものを「気質」といい、その気質に環境要因が加わって性格は形成されると考えられてきました。
性格心理学で最も有名な分類方法が、「類型論」と「特性論」です。
<クレッチマーの類型論>
・分類気質
・循環気質(躁うつ気質)
・粘着気質
クレッチマーは体型に応じて気質を3つに分類しています。
気質は生まれつきが大部分であることから、変化が難しいといわれていますが、その後の環境要因や本人の考え方の変容次第では変わっていくと考えられています。
そのほか、ユングの「外向-内向」などが類型論の領域で有名です。
<オルポートの特性論>
・個人特性
・共通特性
オルポートは、他者と比較できない「個人特性」と比較できる「共通特性」があると考えました。人には比べられない特徴・特性があるということですね。
よく気分が落ち込む人は、「個人特性」で自分と他者とを必要以上に比較しているかもしれません。
そのほか、ビックファイブなどが特性論として有名です。
行動心理学は、人間の行動パターンを科学的に分類して理解を深める学問です。
ビジネスの現場で実践的に使えるものが多いですが、直接観察できる「行動」を中心とした研究のため、1人ひとりの心情や思考はあくまでも統計的な傾向にすぎないといわれています。
しかし、傾向だとしても多くの人を動かすビジネスでは以下のような行動心理学の知識が活用できるでしょう。
人間は未完成のものへの興味を持つという心理効果のことです。
たとえば、バラエティ番組で盛り上がっているところでCMに入るなどもツァイガルニク効果の1つ。ほかには、「続きはwebで」などと「もっと知りたかったのに!」という気持ちからクリックすることを狙うときにも使用されます。
大多数の人が支持していることは、よりその選択肢を選ぶ人を増やすという心理効果です。
たとえば、同じ金額の化粧品でも「コスメ人気No.1」と書いてある方に興味を持ちませんか?
そのほかにも、選挙で「田中さんVS鈴木さんに注目」となっていたら、ほかに候補者がいても「田中さんか鈴木さんにしよう」となる人が多くなることなどがあげられます。
神経心理学とは、脳が損傷された場合に起きる認知機能を研究する学問です。
たとえば、事故による高次機能障害などの影響がどのようなものかを解明することが研究対象となります。
神経心理学誕生当時は、科学技術はまだ発展しておらず、MRIやCTはありませんでした。事故によって損傷した患者さまの言語や思考、記憶などを調べていくことで損傷部位を解明していたのです。
言語心理学や認知心理学、生理心理学とも大きく関連する学問となっています。
生理心理学とは、自律神経系や脳に関する機能を研究する学問です。
人間の心と身体の関係を解明していくことにより、さまざまな現象の理由を探っていきます。
たとえば、人が手に汗をかいているときの心理状態などを研究することが生理心理学の対象。身体の反応と心理状態の関係性を明らかにしていく学問が生理心理学です。
応用心理学は、基礎心理学から発展した数多くの分野が存在しています。
今回は代表的な12種類の基礎心理学の分野を紹介しますので、自分の進みたい方向性の参考にしてみてください。
臨床心理学とは、人間の心の悩みを理解し、支援していくための研究を行う学問です。
人間の個別性を尊重し、サポートしていくための実践的な分野となります。
カウンセリングや心理療法は、臨床心理学がベースであることから、カウンセラーを目指している人は必ず学ぶべき学問でしょう。
臨床心理学ではたとえば以下のようなことを学びます。
・人間の悩みはなぜ生じるのか
・心理的サポートをするにはどのような知識やスキルが必要か
・自己理解や他者理解を深めるにはどんな知識が必要か
上記の学びを深めるために、三大学派(精神分析、行動主義、ゲシュタルト心理学)などの精神障害者の治療に関連する領域も学びます。
犯罪心理学とは、人間はどのようなメカニズムによって罪を犯してしまったのかなどを研究する学問です。
犯罪心理学の分野は、犯人の更生や事件の調査、被害者支援などさまざまな場面で役立ちます。
また、犯罪心理学は生理心理や社会心理学が基礎となっていますが、心理学以外の分野も欠かせません。たとえば、犯罪学や司法精神医学などは、犯罪心理学の研究に必要不可欠な学問です。
大学で犯罪心理学を学ぶ場合、臨床心理学科ではなく社会心理学科などが選択肢となります。大学によっては、公認心理師や臨床心理士になるルートではない場合もあるので、よく注意して進路を決定してください。
犯罪心理学は、警察や裁判所などで仕事をしたい人に役立つ学問です。
教育心理学とは、学校のことだけが対象ではありません。
広義の意味の「教育」を対象とした学問であり、教育心理学は集団心理学や社会心理学、発達心理学などがベースとなっています。もともとは応用心理学の一部として扱われていましたが、近年では応用心理学とは別の学問として考える傾向も増えてきました。
教育心理学は、個人の変容と環境の関係性を解明することが目的の1つです。環境の1つとして「学校」が対象となるため、学校心理学というさらに発展した学問も存在します。
しかし、教育心理学は子どもや学校を中心とした研究をする人も多いことから、学校心理学と区別せず扱っている人もいるようです。
子どもや人間の学び、人間関係などについて勉強したい人は教育心理学を学ぶことをおすすめします。
産業心理学は、産業に関する全般を対象とした研究をする学問です。
企業で働く人々の行動だけでなく、商品やサービスなどの生産・消費に関する人間の行動や心理状態について研究します。
近年は、もともと別の学問であった「組織心理学」と合わさり、「産業・組織心理学」ともいわれるようになりました。
<産業心理学の活かし方>
・従業員のモチベーションを高める
・部下の悩みに応える、サポートする
・大ヒット商品を作り出す
特にビジネスやマーケティングで活かしている人が多い心理学です。カウンセラーを目指していない人でも学べることが多いでしょう。
スポーツ心理学とは、人間の心の状態が、スポーツや試合の成果に及ぼす影響について研究する学問です。
スポーツ選手のパフォーマンスをあげる方法や、効果的な指導のためにどのようなアプローチが必要かを探求していきます。
たとえば、人間はチャレンジ精神や向上心が生まれると、実力以上の力を発揮できるそうです。このように、選手のメンタルがどのような状態になれば、功績を残せるかを考える学問となります。
指導者やサポーターとして活躍したい人だけでなく、スポーツ選手本人やスポーツ関連の製品を扱う会社に勤めたい人にもおすすめの学問です。
災害心理学は、自然災害以外に人的災害なども研究対象とする学問です。
災害や事件、事故などによって強いストレスを感じるような場面のすべてを研究対象としています。
カウンセラーになる人以外には、消防士や警察官、企業の危機管理担当などを目指す人も活用できる分野である災害心理学。
近年は、さまざまなハラスメントに関する研究も注目され、ますますニーズが高まっている分野です。人間の安全と安心を実現できるだけでなく、もしものことがあったときにPTSDなどの精神疾患から身を守るためにも、重要な心理学であると考えられています。
家族心理学とは、家族を1つのシステムとみなして理解を深める学問です。
私たちは個人である次に、家族の一員ですよね。しかし、家族であっても1人ひとりの価値観は異なり、所属する社会(学校や会社など)も違うため、意見がぶつかることもあると思います。
家族心理学では、複雑化する家族を研究対象とし、「個人として」「家族という集団として」心理状態を捉えていくことが目的です。集団だけど、学校や会社組織とは異なる関係性を科学的に解明していきます。
子どもや夫婦関係の支援に携わりたい人は、切り離せない分野なので学んでおくといいでしょう。
環境心理学とは、私たち人間が暮らす人工的な環境と自然環境を研究対象とした学問です。
人工的な環境には、公園や図書館など公共のものから、住宅などの生活環境も含まれます。自然環境は、いうまでもなく人の手が加わっていない環境すべてが含まれます。
環境心理学では、それぞれの環境が人間の精神状態にどのような影響をもたらすかが研究対象の1つ。人間の過ごしやすい環境を見つけていくために、心理学だけでなく、地理学や建築学などにも携わっていきます。
また、地域の環境や住環境に限らず、インテリアや文房具なども人工環境の1つです。インテリア関係やモノづくりに携わりたい人が学んでおくといいでしょう。
交通心理学とは、自動車や道路交通に限らず、航空や鉄道なども含めた交通全般を研究する学問です。
交通事故のリスクは、例外もありますが運転手側の行動や意識などが大きく影響していますよね。交通心理学は、運転時の行動や情報処理に関する研究を通して、事故のリスクを減らすシステムの改善に役立っています。
近年は、高齢化に伴う高齢者ドライバーが加害者となる事故、そのほかにも子どもを車内に取り残してしまう事件などへの対策も交通心理学の課題の1つです。
コミュニティ心理学は、マクロを主に研究対象とする学問であり、まだ歴史の浅い新しい心理学の分野です。
マクロとは、個人ではなく集団や地域社会など広く捉えるという意味であり、コミュニティ心理学は社会全体に働きかけるための研究を行っています。
基礎心理学の社会心理学や発達心理学がベースとなっているだけでなく、いくつもの応用心理学と関連性の高い学問。
近年の研究対象としては、LGBTQや障害者などに対する差別の解消なども含まれています。
健康心理学は、人間の健康や病気に対する研究を行う分野です。
心だけでなく身体の健康にも関わり、疾病予防にも関連する学問とされています。たとえば、心臓病になりやすいのはどのような性格傾向の人なのか、予防するためにはどう対策していけばいいのかを考えるのが健康心理学です。
臨床心理学がすでに心の悩みを持つ人、予備軍となりそうな人を対象としているのに対し、健康心理学は身体を含めた広義の健康や、すべての人間を対象としているといえます。
芸術心理学とは、幅広い観点から見た「芸術」と人間の心への影響を研究する学問です。
ここまで紹介したなかでは、唯一心理学部では学ぶ機会が少ないと思われます。
芸術心理学は、どちらかといえば、造形やデッサンなどに関連する分野の人々がそのほかの学問と関連させ、人間の芸術の捉え方などを学ぶ分野です。
たとえば、芸術学や知覚心理学、認知心理学との関連性について学びを深め、構図や色彩の効果などを考えます。
心理学は1つではなく、基礎と応用に大分類され、さらに細かい種類に分けると数多くの分野が存在することがわかりましたね。
これから心理学を学びたいなら、まずは基礎心理学の理解を深めることで応用心理学のメカニズムが理解しやすくなるでしょう。
カウンセラーを目指している人だけでなく、子育て中の方や人間関係に悩んでいる方などにも、心理学は役に立つ学問です。
今回の記事を何度も見返し、自身の将来やキャリアのために、どのような心理学を学べばいいのかを考える参考にしてみてください。
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