臨床心理士とは、心の専門家として認知度の高い民間資格です。
国家資格である公認心理師が誕生してからも、さまざまな求人で求められている資格となっています。
今回は、臨床心理士になる方法や資格試験の概要、取得後の就職先や年収などについて解説。公認心理師と臨床心理士の違いも解説するので、資格取得検討中の人は参考にしてみてください。
臨床心理士は、民間資格でありながら信頼性が高い心理職の資格として有名です。
まずは、臨床心理士になるための流れや、社会人・主婦の方が臨床心理士になる方法を紹介します。
臨床心理士になるには、以下のステップを踏む必要があります。
①4年制大学進学し、卒業
②臨床心理士になるための指定大学院もしくは専門職大学院進学
③大学院が「第二種」の人のみ、臨床経験1年以上後に認定試験
第一種大学院もしくは専門職大学院の人は、卒業後に認定試験受験
④合格者のみが臨床心理士と名乗れる
このような流れになっています。
また、臨床心理士は5年ごとの資格更新が必要となるため、更新のためのポイントを5年以内に集めないと、臨床心理士とは名乗れなくなります。
上記の流れで紹介したように、臨床心理士になるには基本的に大学院進学が必要です。
高校生がこれから臨床心理士を目指す場合、最短6年かかることになります。
臨床心理士指定大学院に進学する以外のルートは医師免許を取得して、心理臨床経験を2年以上積む方法、もしくは大学院や医師免許と同等レベルの知識を証明する必要がります。
以上のことから、基本的には大学院進学が必須と理解しておきましょう。
<指定大学院と専門職大学院数>※2023年6月時点
第一種:148校
第二種:8校
専門職大学院:5校
<第一種指定大学院が「ない」都道府県>※2023年6月時点
青森、富山、滋賀、和歌山、高知、長崎、熊本、宮崎
参考:
都道府県別・臨床心理士数と指定大学院・専門職大学院数一覧
社会人や主婦の方が、これから臨床心理士を目指す場合、現在の学歴次第で方法が異なります。
①4年制大学もしくは、修業年限が4年以上の専修学校卒業者
大学院に進学し、資格認定試験を目指す(最短2年)
※学部は関係ありません
②短大や3年制までの専門学校等卒業者
通信大学等で、必要単位を取得したのちに大学院に進学し、資格認定試験を目指す(最短3年)
③高校卒業者
4年制大学に進学後、大学院に進学し、資格認定試験を目指す(最短6年)
そのほか、大学院によっては「外国の大学を卒業している人」「大学院に進学するためのふさわしい学力がある人」なども入学できます。
大学院卒業後に受ける「臨床心理士資格認定試験」について、詳しく解説します。
〈主な受験資格〉
●指定大学院(1種・2種)を修了し、所定の条件を充足している者
●臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了した者
●諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後の日本国内における心理臨床経験2年以上を有する者
●医師免許取得者で、取得後、心理臨床経験2年以上を有する者 など
引用:受験資格 | 公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会
臨床心理士試験は、筆記試験(一次試験)と面接試験(二次試験)です。
一次試験と二次試験はセットで合格する必要があるので、二次試験不通過の場合はまた一次試験から受け直しとなります。
■筆記試験概要
多肢選択方式試験(マークシートテスト)と、論文記述試験の両方を一日で実施
多肢選択方式試験は、臨床心理士として最低限必要な知識が中心となり、このあと紹介する心理士の業務内容に関する問題が中心です。一方、論文記述試験は心理臨床に関する指定テーマについて、文字数指定と時間制限があるなかで行われます。テーマは当日まで発表されません。
■面接試験概要
一次試験通過者のみが受験できます。
2名の面接官によって口述方式で行われるのですが、知識やスキルの確認だけでなく、心理士としての基本姿勢を持っているかなど「人間力」も問われるので対策に気を付けましょう。
臨床心理士試験は、年1回のみ実施されます。
会場は東京都のみですので、東京以外にお住いの方は事前に宿泊場所などを確保する必要があるので注意しましょう。
時期は例年通りでいくと、10月中旬です。試験の申込は6月中旬から開始されますが、申し込み書類の請求も必要なので、後回しにせず早めに申請しましょう。
二次試験は例年通りでいくと、12月に実施されています。
昭和63年から毎年実施されている臨床心理士の合格率は、65%程度です。
合格率には、医師免許取得者も含まれていますが、毎年10名前後のみが受験しているため、平均値に大きな影響は及ぼしていないでしょう。
次に、臨床心理士の業務内容を紹介します。
臨床心理査定とは、相談者さんについて「この人はどんな人か」を考えること全般を指します。
どんな人かわかることで、方針を定められるのです。
たとえば、心理検査を実施したり、カウンセリングでさまざまな対話を積み重ねることで、人となりを分析していきます。
指定大学院では、基本的な心理検査が取れるよう訓練する機会があり、就職先によっては検査が取れる前提で雇われるようです。
大学院では、知能検査とロールシャッハテストをメインに、性格検査などの検査実施や採点の仕方などを学びます。授業外で、学生同士で練習することもあるそうです。
臨床心理面接は、カウンセリングのことを指します。
必要に応じて、心理療法なども行いながら、相談者さんの支援を行っていくのが臨床心理士の仕事です。
■臨床心理士が行う心理療法一覧(一部)
精神分析、クライエント中心療法、認知行動療法、箱庭療法、家族療法、芸術療法、ゲシュタルト療法、遊戯療法(プレイセラピー)など
臨床心理的地域援助とは、地域や企業、学校などに属する人の心の健康に関する支援活動を行うことです。
例えば、企業のストレス対処に関する研修の講師など、集団に対する講演や研修などもあれば、ほかの専門家に助言や提案を行うコンサルテーションなどが該当します。
心の課題を解決するためには、個人が気をつけているだけでは限界があることも。予防の意味も含め、集団や地域社会、ほかの専門家に対して支援活動を行うことも臨床心理士の仕事です。
適切な支援を行うために、日々スキル向上や新しい知識の獲得をすることは、臨床心理士にとって必要な業務の1つです。
臨床心理士や公認心理師試験では、「自己研鑽」と呼ばれている重要な専門業務に該当します。
学会発表や講演会のほかに、論文執筆や研修会参加、事例検討会実施なども含む「調査研究」は、臨床心理士の重要な仕事といえるでしょう。
臨床心理士と公認心理師の違いを次の4つの視点から解説していきます。
仕事内容は大きく変わりませんが、公認心理師の業務内容には「関係者への支援」「心の健康に関する情報提供」があり、代わりに研究の記載はありません。公認心理師には広範囲な支援が期待され、臨床心理士には専門的な支援が期待されているといわれています。
それでは、そのほかの違いについて、詳しく解説します。
2つの資格の大きな違いは、臨床心理士が民間資格で、公認心理師は国家資格であること。
臨床心理士とは、公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会が認定する「心理学の専門職」の証明となる資格です。
国家資格ではありませんが、医療や教育、福祉などの各業界から信頼されている認知度の高い資格であり、公認心理師誕生までは「心の専門家=臨床心理士」でした。
一方で公認心理師は、公認心理師法に基づいた国家資格となっています。
臨床心理士の受験資格は、先に解説した通り、指定大学院を卒業した人もしくは医師免許取得者となります。大学は心理学部である必要はなく、大学院で必要単位を取得していることが重要です。
一方、公認心理師は4年制大学のなかでも「公認心理師カリキュラム」のある学部を卒業し、指定大学院も修了した人が受験資格を得られます。「公認心理師カリキュラム」は、すべての心理学部にはないので、入学前によく確認しましょう。
また、特例措置に該当する人は公認心理師試験を受験できます。
臨床心理士と公認心理師は、試験方法が異なります。
■臨床心理士
筆記試験(一次試験)と面接試験(二次試験)
筆記試験は多肢選択方式試験(マークシートテスト)と、論文記述試験
会場は東京都のみで、一次試験は東京ビックサイト、二次試験は東京国際フォーラムです。
■公認心理師
マークシート方式の試験
試験範囲として出題基準(ブループリント)が公表されている
会場は2024年現在、東京都と大阪府のみですが、会場の詳細は受験票が届くまでわかりません。例年、大學のキャンパスが選ばれることが多いようです。
臨床心理士は、5年に1回更新する必要がありますが、公認心理師には更新制度はありません。
臨床心理士資格の更新は、更新する時期までに、15ポイントをためて申請するシステムです。15ポイントは、研修会や学会参加などで1~4ポイント程度つく仕組みとなっています。
臨床心理士の就職先を紹介します。
公認心理師も同様のため、どちらにするか考えている人も参考にしてみてください。
臨床心理士が勤務する分野として、最も多いのが医療・保健分野です。
病院やクリニックなどで、医師の指示のもと、心理検査やカウンセリングを実施します。
精神科や心療内科であれば、精神疾患の人を中心に支援しますが、産婦人科や小児科、総合病院などに勤める臨床心理士もいます。
また、患者さんだけでなく、必要に応じて家族や関係者に助言や提案をすることも臨床心理士の仕事です。
保健分野は、保健所や保健センターなどで公務員として勤務する人が多いといわれています。特に依存症や引きこもり、虐待などに関わる仕事や、乳幼児の発達検査などを行うことが多いです。
教育分野は、スクールカウンセラーとして働く人が最も多いとされています。
文部科学省は近年、スクールカウンセラーの設置推進事業を行っているため、年々募集枠は増加しているようです。毎年1回、各都道府県の教育委員会が公立の小・中・高と、特別支援学校のスクールカウンセラーを募集しています。
そのほか、私立のスクールカウンセラーや大学の学生相談室、教育センター、教育相談機関なども臨床心理士の就職先の1つです。
福祉分野には次のような就職先があります。
・児童相談所
・療育施設(児童発達支援事業所、放課後等デイサービス)
・障害者福祉センター
・高齢者福祉施設 など
児童虐待や発達障害、認知症、ハラスメントやDVなど、さまざまな課題に対する専門的な支援を行っています。
企業内でメンタルヘルスサポートや対策を担当するほか、外部EAPとして関わることもあります。
仕事や職場の人間関係に悩む人への支援のほかに、業務を円滑に進めるためのサポートやキャリアプランに関する相談にも対応。企業の規模によっては、産業医や保健師などと連携してチームを組むこともあるそうです。
裁判所や少年鑑別所、刑務所、少年院、警察署などで、心理検査や調査、矯正、防止策活動などを行います。
心の専門家として所属しますが、法律などの専門知識もある程度知っておく必要があるでしょう。また、非行少年や犯罪を犯した人が、再犯することなく構成できるように導くなど、期待されている役割が非常に大きい仕事です。
研究所や大学に所属して、心理学の専門分野に関する研究・調査を行います。
大學に所属する場合は、教授や助教として講義を担当したり、臨床心理士育成に貢献することも役割の1つです。
私設のカウンセリングルームに所属したり、個人で活動される臨床心理士がここに含まれます。
私設のカウンセリングルームとは、カウンセリングのみを行う施設のことです。なかには心理検査ができるところもありますが、医療機関ではないため診断名がつくわけではありません。
個人で活動される心理士は、オンラインでカウンセリングを行う人や情報発信活動をされている人などがいます。カウンセリングではなく、講師として活動する人もここに含まれており、マルチに活動する臨床心理士も増えてきているようです。
臨床心理士の年収は、勤務先で大きく異なることがあります。
もともと、臨床心理士は正社員の求人が少なく、非常勤(パート)の求人が多かったのですが、近年は正社員も増えてきました。
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によれば、臨床心理士の年収は約437万円だそうです。非常勤の場合は、200万円~300万円が平均のようですが、勤務先の選び方によってはもっと稼いでいる方もいます。
最も年収が高いとされる職場は、司法分野で平均年収は500万円~600万円です。ただし、司法分野の就職は公務員試験に合格する必要があるなど、臨床心理士資格だけでは採用されないことが難点といえます。
次に年収が高いのは、研究分野(特に大学教授)。産業や医療も、勤務先の規模や立地によって、年収は高いといわれています。
公認心理師法が定められてから、「臨床心理士は今後どうなるのか」という声は多く上がっています。
公認心理師法が定められて7年経過しましたが、未だに臨床心理士の求人は減っておらず、増え続けているようです。近年は「公認心理師と臨床心理士の両方を持つ者」もしくは「公認心理師と臨床心理士のいずれかを持つ者」という求人をよく見かけます。
心の悩みを抱える人は、年々増加傾向にあり、対人援助職はAIが代わることも難しいことから、これからも必要とされる資格でしょう。
活動の幅も以前より広がっているので、働き方次第では仕事に困ることはないと考えられます。
大学院進学や2つの試験、5年ごとの更新のことを考えると「ほかの資格のほうがいいかな?」と思う人も少なくありません。
最後に、臨床心理士以外の心理カウンセラー資格が役に立つか、取得するならどの資格がいいかを解説します。
臨床心理士以外なら、「公認心理師」や「キャリアコンサルタント」などの国家資格や、「産業カウンセラー」などの知名度の高い民間資格は就職に有利です。
臨床心理士を目指す人のなかで、これから大学進学も検討している人は、公認心理師とのダブルライセンス(2つの資格を取得すること)を目指すことで就職先や仕事内容の幅が広がっていくでしょう。
キャリアコンサルタントや産業カウンセラーは、企業や人材派遣会社、学校のキャリア相談室などの求人で応募条件の1つとなっていることが多いです。
臨床心理士を持っていなくても、応募できる求人もあり、大学院進学も必須ではないので、知名度のあるなかでは目指しやすい資格といえます。
民間資格も活用方法によっては、さまざまな場所の活動に役立ちます。
臨床心理士とのダブルライセンスで、専門性をアピールすることもできますし、臨床心理士を取得しなくても心理系の仕事に就ける可能性が広がるでしょう。
たとえば、児童や高齢者福祉の現場は、無資格の人も応募できるところがあります。
無資格の人も応募できる場合、知名度の低い民間資格であっても資格を持っていることはアピールとなり、ほかの応募者と差をつけることにつながるのです。
また、今勤めている職場で資格取得や活用できる術を伝えることで、相談員などの役割をもらえる可能性も出てきます。ほかにも、副業やフリーランスで活躍する際のアピールポイントとなるので、活用方法はいくらでもあると思っていいでしょう。
臨床心理士とのダブルライセンスや、臨床心理士ではない心理カウンセラー資格を目指す人におすすめの資格をまとめました。
ここまでも何度か紹介した資格も含めて、国家資格や知名度の高い資格でおすすめの資格は以下の10個です。
※(国)は国家資格
・公認心理師(国)
・キャリアコンサルタント(国)
・産業カウンセラー
・精神保健福祉士(国)
・社会福祉士(国)
・作業療法士(国)
・言語聴覚士(国)
・理学療法士(国)
・保育士(国)
・児童指導員任用資格
公認心理師と臨床心理士は、学部やコースの選び方次第で同時に目指せます。
また、児童指導員任用資格は「心理学部や福祉系の学部を卒業する」もしくは「事業所で2年以上の実務経験を積んでいる人」や教員免許を持っている人なども認められる資格なので、児童福祉系の仕事に就きたい人にはおすすめです。
合格率が高く、難易度が比較的低い資格のなかにも専門性の高いものは数多くあります。
以下の10個の資格は、すべて受験資格がありません。
・福祉心理アドバイザー
・音楽療法カウンセラー
・子供心理カウンセラー®
・睡眠・寝具インストラクター
・夫婦心理カウンセラー®
・行動心理カウンセラー®
・アンガーカウンセラー®
・自己肯定感分析士
・スポーツメンタルケア士
・マインドフルネスセラピスト
すでに知識を持っている人は、今すぐ申し込める最短の受験日に試験を受けられます。
もし、これから勉強したいけど何から学べばいいかわからない人には、次の講座がおすすめです。
<おすすめ通信講座・スクール>
・SARAスクール
・諒設計アーキテクトラーニング
まずは資料請求して、目指したい資格を取得しましょう!
今回は臨床心理士について解説しました。
臨床心理士は、民間資格でありながらも長年信頼されている心理系の資格です。これから目指す人は最短で6年の時間がかかりますが、6年学ぶ価値はきっとあるでしょう。
しかし、社会人や主婦の方など、効率よく資格を取得したい人もいますよね。自分の目指す方向にあわせて、取得する心理カウンセラー資格を検討してみてください。
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