
心理学を生かせる仕事は、心理カウンセラーなどの福祉分野、産業カウンセラーなどの労務分野、公務員の心理専門職、マーケティング、司法職など、幅広い分野に及びます。現代社会の課題解決に不可欠なスキルとして、高収入が期待でき、AIに代替されにくい仕事も多くあります。
ここでは、しっかりとした学習で目指すことができる仕事と、それに役立つ資格を中心に紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
心理学とは人間の心理をその行動から科学的に解析、アプローチしていく学問です。
そのため、人が関わりながら行われる経済活動や仕事のあらゆる場面で心理学を生かすことができます。
心理学を生かせる仕事の代表的なものにカウンセラーがあります。国家資格である公認心理士、民間資格の臨床心理士をはじめ、「心理」と付く職業や仕事にはカウンセリングを用いるものは少なくありません。
しかし、心理学の知識はカウンセラー以外の様々な仕事で生かすことができます。
関連コラム:カウンセリングとは|日本メディカル心理セラピー協会
心理学を学ぶメリットを見てみましょう。ここでは特に仕事に生かせるメリットを4つ紹介しています。
● ストレス対処やセルフケア術が身につく(メンタルケア)
● 自己理解が深まる(コーチング)
● 周りの人の悩みに気づき、対応できる (労務)
● 人間の言動の理由がわかる(マーケティング)
心理学を学ぶことで得られる上記の4つのメリットは、キャリアコンサルタント(キャリアアドバイザー)、メンタルトレーナー、人事、労務、マーケティング、営業など様々な仕事で生かすことができます。
大学の心理学部出身者における「心理学の専門職」と「心理学を生かした仕事」について確認しましょう。
日本心理学会「第2回 大学における心理学教育調査」によると:
● 心理学の専門職に【就かなかった】学生の割合
● 私立大学 54%
● 国立大学 40%
● 公立大学 81%
● 心理学を生かした職に【就いた】学生
● 私立大学 62%
● 国立大学 67%
● 公立大学 38%
この調査結果から、心理学部出身者は必ずしもカウンセラーなどの専門職に就くわけではなく、多くの学生が心理学の知識を様々な職業で活用していることがわかります。
参照:日本心理学会「第2回 大学における心理学教育調査」
心理学に関する知識の需要は、特にメンタルケアや転職市場における自己分析などのフィールドで伸びています。主に精神疾患の罹病者数と転職市場の業界規模の推移から読み取ることができます。
また「周りでうつ病と診断された人の話を聞いた」「転職に関する広告がやたらと流れてくるな」といった実感を持つ人もいるかもしれません。
誰でも発信できる時代となった現代では、自らを表現したい人が増え、「聞き手不足」の時代であるとも言われています。
こうした状況において、まさに人の話を上手に聞くことができるカウンセリングや、それに対して適切なアドバイスができるコーチングなどのスキルが求められています。心理学の専門知識があれば、なおさら仕事で活躍できるでしょう。
心理学を生かした仕事が高収入であると言える理由には主に3つが挙げられます。
● 心理学系人材の不足
● 公務員心理職募集の観点
● 心理学系の仕事の性質
3つの観点から高収入の理由について解説します。
デジタル社会の進展により、精神的ケアを必要とする人が増加しています。「自分を大切に」「生活を豊かに」といったメッセージは、現代人に受け入れられ、サウナ・ジム・健康食など、様々なメンタルケアに繋がるサービスが普及しています。
しかし、これらのサービス業界や、カウンセラー、セラピスト、コーチングなど直接的なケアを提供する職種において、心理学の専門知識を持つ人材が不足している状況です。
かつての「IT人材不足」に代わり、現在では「人を深く理解できる人材」があらゆる業界で求められています。これは今後の時代における重要な潮流となるでしょう。
心理学は専門性の高いジャンルのため、公務員などの仕事における専門職の募集がいくつもあります。試験の難易度は高めですが、安定した高収入が得られる魅力的な職種です。
心理判定員、児童心理司(児童相談所・障害児施設職員)、心理技官、相談専門員、少年警察補導員など、様々な専門職があります。公務員の専門職が充実していることが、心理学を生かした仕事の収入水準の底上げにつながっています。
人の生死に関わる仕事には大きな精神的プレッシャーがかかります。救急外科医がその代表例で、一般的に高収入です。弁護士や政治家など、人々の人生の岐路に関わる仕事も同様に高収入となる傾向があります。
心理学の仕事もこの特徴を持ちます。現代ではうつ病は10〜15人に1人が発症する身近な疾患で、年間2万人を超える自殺者の約36%は精神疾患を原因としています。精神科医や心理士はこれらを未然に防ぐ重要な役割を担います。
心理学を生かした仕事は人生に深く関わり、またAIに任せにくい分野であることも、高収入の要因となっています。
参照元:
警視庁「自殺統計に基づく自殺者数の推移等」
厚生労働省「精神疾患を有する総患者数の推移」
心理学を学ぶことで高収入が目指せるおすすめの仕事を6選厳選し、紹介していきます。
高収入が目指せる心理学を生かした仕事として、心理学者や精神科医・心療内科医がまずは挙げられますが、学者としての生活や医学部受験は、現実的にはかなり難しい道のため今回は割愛します。
大学職員や公務員の心理学専門職は、高収入が目指せる安定した仕事です。
国家公務員総合職など、採用試験に心理学の専門科目がある公務員の専門職は、勤続年数に応じて500〜1000万円の年収が見込めます。心理学部の教授や講師は、経歴や研究成果により年収400〜600万円が目指せます。
地方公務員の心理職は、都道府県や政令市で心理面接、心理診断、心理学的援助などを行います。初任給は月収21万円ほどですが、勤続年数に応じて年収600万円以上も可能です。これは民間の心理職より100〜200万円ほど高い水準です。
国家公務員の中でも特に犯罪心理学や司法心理学を生かした司法関連の仕事を紹介します。
家庭裁判所調査官(裁判所職員)は、家庭内のトラブルや非行少年に関する調査を行う職業です。心理学の知識を生かし、少年事件や離婚、相続問題などの解決に携わります。裁判所職員採用総合職試験に合格後、2年間の研修を経て正式な調査官となります。年収は900〜1000万円と、国家公務員の中でも高水準です。
法務技官は矯正心理専門職の国家公務員で、主に少年院や少年鑑別所で勤務します。入所した少年への心理検査やカウンセリングを担当し、非行臨床の最前線で心理学の知識を活用します。忍耐力は必要ですが、少年の更生支援という重要な役割を担います。年収は600〜700万円と国家公務員の平均を上回ります。
キャリアコンサルタントは転職市場で活躍できる職種で、現在働いている人や、これから働きたい人の支援を行います。教育機関の就職支援、人材紹介会社、ハローワーク、企業の人事などで活躍しています。
キャリアアドバイザーも同様に、就職・転職のサポートを行う仕事です。求人紹介、応募書類の添削、面接練習、企業との調整など、幅広い支援を提供します。企業内のキャリアコンサルタントをキャリアアドバイザーと呼ぶこともあり、その場合は従業員のサポートと組織活性化も担います。
キャリアコンサルタントは国家資格保持者のみが名乗れる仕事で、その信頼性の高さからキャリアアドバイザーよりも年収が高めとなっています。フリーランスも多いため収入の幅は広いですが、一般的に企業の正社員では年収400〜800万円がボリュームゾーンです。
また、公務員試験に比べると資格試験の難易度は低く、高収入を目指せる職業としておすすめです。転職市場の活性化や人材の流動化により、経営面へのアドバイスも重要なスキルとなっています。
マーケティングは心理学の知識を最大限に生かせる分野です。マーケティングとは顧客のニーズを満たすためのあらゆる手法の総称で、主にBtoB(企業向け)やBtoC(消費者向け)を担当します。近年は個人間取引(CtoC)も扱うフリーランスのマーケターも増えています。
特に行動心理学や社会心理学の知識が役立つこの分野では、心理学を生かした専門的なマーケティングができる人材は年収500〜700万円が見込めます。
心理学はマーケティング以外のビジネス分野全般でも大きな強みとなり、高収入を目指せます。
心理学の手法を経済学に応用した行動経済学は企画・営業・接客・販売など様々な分野で生かすことができます。心理学の実験で用いるデータ解析などの科学的アプローチも、定量的な分析に役立ちます。
営業では社会心理学の「返報性の法則」を応用し、クライアントの話に熱心に耳を傾けることで契約成立の可能性が高まります。販売においてはPOPのキャッチコピーや色彩選択など、心理学の知識を生かした効果的な販促が可能です。
心理学を生かせるバックオフィスの専門職として、人事・労務の分野が注目を集めています。近年企業の衛生管理が重視される中、産業保健担当者を含め、深いコミュニケーションと専門知識が今まで以上に重視されています。特に大企業では専門家として高い評価を得られます。
人事労務職の基本年収は300〜400万円ですが、心理学を生かしてより高収入を目指すには条件があります。資格取得は重要な要素で、資格手当により年収が50〜100万円上昇することもあります。産業カウンセラーなどの資格は必須の場合も多く、複数の心理学関連資格を持つことで、より高い信頼と評価を得ることができます。
そこで、AIに代替されず、将来性のある心理学関連の仕事を3つ紹介します。
心理カウンセラーは、クライアントの心の健康回復をサポートする仕事です。対話による心理学的介入が必要なため、AIに代替されない代表的な職種と言えます。
公認心理士や臨床心理士の資格保持が一般的です。活躍の場は精神科、リハビリテーション科、終末期医療など、保健・医療の幅広い領域に及びます。
心理カウンセラーの年収は300〜500万円が相場ですが、経験や評判、難関資格の有無により、高収入を目指せることも多いです。
特に公認心理師は唯一の国家資格で、診療報酬が適用される業務範囲も拡大しています。診療報酬は通常の給与とは別枠のため、高収入につながる重要な要素となっています。
参照:日本公認心理師協会「【解説】診療報酬に収載されている公認心理師が関与する業務」
スポーツ選手のパフォーマンス向上や目標達成を支援するコーチングやメンタルトレーナーの役割が、近年ビジネス分野でも注目を集めています。スポーツ心理学の知見は、企業や教育機関で高いパフォーマンスを求められる人々の支援に応用されています。
メンタルトレーナーは心の悩み解決ではなく、マインドセットやストレスマネジメントのプログラム作成・実行を通じて、パフォーマンス向上と強いメンタル作りをサポートします。
アンガーカウンセラーなどのコーチング職は、経営者向けのコンサルティングでも活用されています。
関連コラム:アンガーカウンセラー資格のおすすめ資格|資格のメリット・仕事内容や勉強法まで解説!
コーチングやメンタルトレーナーの年収は一般的に300〜500万円と、現時点では高くありませんが、この分野への注目度は高まっており、今後の収入増加が期待できます。書店でもコーチング関連の本が一定のスペースを占めるほど、需要が高まっています。
個人のスキルと信頼性が重視されるこの職種は、フリーランスとして独立しやすいのが特徴です。独立後は、クライアントの規模や数に応じて大きく収入を伸ばすことが可能です。
コーチングとは異なる分野に見えますが、セラピーの知識はサポート業務として大いに活用できます。
セラピストはリラクゼーションサロン、メンタルケア施設で働く職種です。心理学の知識を生かせば、訪れる人々に癒しとリラックスの時間を効果的に提供することができます。
特にリラクゼーションや美容分野では、心理学とアロマセラピーを組み合わせた知識が有効です。
関連コラム:アロマ資格はどれがいい?おすすめ11選を目的別に分かりやすく解説!
児童指導員は子どもたちの自立と社会参加を支援する仕事です。主に児童発達支援事業所、放課後等デイサービス、障害児入所施設、児童養護施設などで活動します。子どものケアという重要な役割を担うため、AIには代替できない職種です。
児童指導員の年収は、民間施設では250〜450万円とやや控えめですが、働く場所や役割によって大きく変動します。
公立施設では公務員として扱われ、最大で250万円程度の収入増が見込めます。また、医療型児童支援施設など、より専門性や責任が求められる施設では、より高い年収を得られる傾向にあります。
公認心理師は2018年度に制定された日本初の心理職国家資格で、保健医療、教育、福祉、産業、司法など幅広い分野で活躍できます。心理相談や援助を行うカウンセラーとして高い信頼を得られる、名称独占資格です。
活動内容は直接的なカウンセリングによる支援だけでなく、心の健康に関する教育や情報提供も含まれます。資格取得には約6年を要しますが、心理学を生かした仕事において最も有効な資格といえます。
臨床心理士は、臨床心理学に基づいてカウンセリング、心理検査、調査研究などを行う資格です。活動範囲は公認心理師とほぼ同じですが、日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格という点が異なります。
公認心理師が制定される以前は、心理職の中で最も信頼される歴史ある資格でした。2025年現在でも求人では「公認心理師または臨床心理士」という表記が一般的で、「認定心理士」と比べると求人数が多く、給料も高い傾向にあります。
産業カウンセラーとは、企業内で働く人々のメンタルヘルス対策を行ったり、職場の環境改善を目指したりする仕事に必須の資格です。 日本産業カウンセラー協会の認定する民間資格です。人事労務職において、高収入が目指せるおすすめの資格です。
メンタル士心理カウンセラー資格は日本メディカル心理セラピー協会が認定する民間資格です。プロのカウンセラーとして活動するための心理学の知識を基礎から学ぶことができます。
参考:メンタル士心理カウンセラー資格|日本メディカル心理セラピー協会
行動主義心理アドバイザーは他の心理学資格とは異なり、特に行動心理学に重きを置いた資格です。特にビジネスの分野において、行動することで人生を変えていく「行動主義」が重視されています。自分の見せ方などについても学べるので、他の心理学系の資格とのダブルライセンスも効果的かもしれません。
参考:行動主義心理アドバイザー|日本インストラクター技術協会
心理学を学ぶ人の特徴として最も多いのは「人の心を理解したい」という、知的好奇心の強さがあります。
子どもの頃から人の行動や性格の違いに興味を持ち、その仕組みを科学的に理解したいと考える方が多くみられます。一方で「人を支援したい」という援助志向の強いという特徴を持つ人もいます。この2つの特徴は心理学を学ぶ上で重要な素養となります。
「心理学部はやめておけ」という声の理由として、「心理学部は就職が厳しい」というものが挙げられます。しかしこの考えはイメージに過ぎません。
確かに臨床心理士などの専門職は狭き門ですが、心理学部で身につける「人の行動を科学的に理解する力」は、ビジネスの様々な場面で重宝されます。特に、心理統計やリサーチ手法、行動分析の知識は、マーケティングや人事、商品企画などの現場で大きな武器となります。
心理学の専門資格がなくても、その知識を生かせる仕事は数多くあります。
例えば、企業の人事部門では採用面接や社員研修、人材育成の場面で心理学の知見が必要とされます。また、マーケティングリサーチや広告企画、商品開発などのビジネス職でも、消費者心理の理解は必須スキルです。
ただし、心理カウンセラーやスクールカウンセラーとして働くためには、公認心理師や臨床心理士などの資格が必要となります。
関連コラム:心理カウンセラーの資格は意味がない?何に使えるのか徹底解説!
未経験でも心理学の知識を生かせる仕事に就くことは可能です。特に企業の人事・採用部門やマーケティング部門では、心理学的な視点を持った人材を求めているケースが多くあります。
しかし、専門性の高い仕事に就くためには、インターンシップや実習などの実践経験を積むことが推奨されます。また、基礎的な心理学の知識に加えて、統計分析やコミュニケーションスキルなど、実務で必要となる能力を身につけることも重要です。
心理学を仕事に生かして、これからの時代で活躍していきたい方には、通信講座で学べる心理系の資格がおすすめです。仕事に生かすために十分な知識を短期間で学ぶことができます。
日本メディカル心理セラピー協会はメンタル士心理カウンセラー資格をはじめ、チャイルド心理カウンセラー資格、行動心理カウンセラー資格など実践的に生かすことができる心理学系の資格が多数あります。
また、合格に必要な評価は70%以上と、比較的ハードルが低いので、初心者の方でも取得しやすい心理系の資格と言えます。
下記のページで講座の詳細をチェックし、ぜひ受講を検討してみてください。
日本メディカル心理セラピー協会の資格認定はこちら
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