インナーチャイルドとはどんな症状や状態なのでしょう。今回は、今の生きづらさにつながっているインナーチャイルドを癒す方法を解説します。
インナーチャイルドとなる原因や症状、インナーチャイルドの9タイプについても紹介しますので、生きづらさ解消のために役立ててください。
インナーチャイルドには、どんな症状や原因があるのでしょうか。
まずはインナーチャイルドがどのような状態を示すのか解説していきます。
インナーチャイルドは「内なる子ども」と直訳されます。
幼少期の家庭環境や過去の経験によってトラウマとなった感情のことです。私たちの内側、つまり潜在意識(無意識)の領域を指します。
人間は成長する過程で、人間関係や物事の取り組みを理解し、徐々に大人としての目線や視点で対処できるようになります。しかし、インナーチャイルドが強く表出すると、大人としての感情や思考が持ちにくくなり、さまざまな場面で生きづらさを感じやすくなるのです。
インナーチャイルドの原因は、主に幼少期の家庭環境です。
およそ10歳までに、身体的もしくは精神的な被害を受けた経験がトラウマとなることが原因と考えられています。
身体的もしくは身体的被害というのは、ひどい扱いを受けたり、誰もがわかるような傷をつけられることとは限りません。
だからこそ、子どもは自分の身を守るために、自分の本来の感情を隠しながら生きる選択を取るのです。「そうでもしないと、生きていけない」から、本来誰もが持っている【子どもらしさ】を隠す習慣が身につき、次のような症状が出現します。
インナーチャイルドの代表的な症状は次の通りです。
・自分に自信がない
・孤独感が強い
・自己否定しやすい
・対人関係がうまくいかない
・コンプレックスを感じやすい
・感情を表に出せない
・周りが望むような「いい子」を演じる
・自己中心的になりやすい
・問題から目を背けやすい
ほかにも、自分の本音がわからない、自己犠牲しやすい、人の世話ばかりするなどの症状もあります。
しかし、これらすべての症状が全員に出現するわけではありません。
幼少期の家庭環境や大人との関わりなど、過去の経験は人それぞれです。いくつもの症状が複雑に出現することもあるでしょう。
インナーチャイルドの影響により、特に生きづらいと感じる状態を解説します。
どのような場面でも、自分のせいにしていませんか?
インナーチャイルドの症状がある場合、自己否定的になりやすいといわれています。自己否定が強まると次のような状態に陥りやすいです。
・すぐに謝る
・責任を自分でとろうとする
・「どうせダメだ」「私なんか」と考える
・相手の方が正しいと感じてしまう
・自分だけできていないと感じる
・褒められても素直に受け止められない
自分を否定することで、さらに自身を傷つけてしまい、インナーチャイルドの症状も強まってしまうのです。
子ども時代に、親から適切な愛情表現をしてもらえなかった子や理不尽な怒られ方をされた子などは裏切られることに過敏です。
また、親の価値観や気分、都合によって否定されたり、脅された(「ごはんあげないよ!」「追い出すよ!」など)場合などにも捨てられることへ過敏になりやすいでしょう。
いつも自分の振る舞いが気になってしまって、ビクビクしながら相手と関わるもしくは、裏切られないために人と関わることをやめる人もいます。
インナーチャイルドの症状が改善していない状態で人間関係を築いた場合、被害者になってしまうことも多いことから「私がダメだから何度も上手くいかない」という気持ちにもなりやすいです。
インナーチャイルドの症状が強いほど、相手に合わせる能力が必要以上に高くなっています。
家庭では家族に合わせ、学校では先生や友達の顔色を見て過ごしていると、本当に自分がどうしたいのかよりも「どうやって相手に合わせるか」という考えになりやすくなるでしょう。
その状態のまま、健全な人間関係を構築できる相手に「あなたはどう思うの?」と聞かれたら困ってしまうのもインナーチャイルドの症状が強い人の特徴です。
「こう言っていいのか」「怒られないか」「嫌われないか」などと考えて、言えなくなった結果、【意見のない人】とも思われやすくなるでしょう。
ますます自分の意見が【正しいのか】【どう思われるか】を気にしてしまい、本当の自分がわからなくなります。
インナーチャイルドの症状があると、自分と向き合うことが苦手になりやすくなります。
本来は、なにかトラブルや上手くいかないことがあると、その原因を考えたり、上手くいくようにするための行動に取り組む人が多いです。
しかし、インナーチャイルドの症状があると、これ以上傷つく前に「離れよう」という選択を取る人がいます。
逃げることすべてが悪いわけではないですが、問題から目を背けやすくなった結果、いつも似たような問題が起こりやすくなるのです。
こうした挫折体験が続くことにより、生きづらさを感じやすくなる人も多くいます。
インナーチャイルドについて理解を深める前に、関連性のあるキーワードを知っておきましょう。
関連性のあるキーワードを知ることで、インナーチャイルドを癒すための視野が広がりやすくなります。
インナーチャイルドとアダルトチルドレンは似ているようで異なります。
・インナーチャイルド
幼少期の家庭環境や過去のつらい経験によって、トラウマとなった感情
・アダルトチルドレン
トラウマとなった感情によって、生きづらさを感じている状態
つまり、「インナーチャイルドによる生きづらさとは」で解説した生きづらさを感じている状態は、インナーチャイルドが傷ついているもしくはアダルトチルドレンとなります。
インナーチャイルドを癒せれば、アダルトチルドレンの症状の緩和も期待できるでしょう。
共依存とは、自分と特定の相手がお互いに過度の必要性を感じている状態です。
もともと、アルコールや薬物などの依存症を持つ人の家族が、依存症者の言動によって自己犠牲になってしまう状態ですが、近年は関係性自体を指します。
たとえば、自立した年齢になった娘と母親が心理的あるいは物理的に離れられていない状況などは、共依存に当てはまります。
「娘の恋愛や子育ての方針に口を出す母親」と「モヤモヤした感情はありつつも、なんだかんだ会いに行ったり連絡をとってしまう娘」などは臨床現場でよく見かける共依存のケースです。
複雑性PTSDとは、さまざまな心の傷が重なり、生活に影響していることをいいます。
PTSDとの違いは複雑かどうかです。PTSDは、1つのトラウマ体験によって心の傷ができている状態を指しますが、複雑性PTSDはいくつものトラウマ体験を繰り返した結果発症します。
複雑性PTSDの診断基準は、ICD-11によるとPTSDの診断基準に加えて次のような状態が出現します。
・感情のコントロールの難しさ
・自己否定や自己卑下、無価値感
・親密な関係を継続的に維持することの難しさ
参考:
小特集 – 複雑性 PTSD |公益社団法人 日本心理学会
複雑性PTSDの人の多くは、インナーチャイルドの症状があるといわれています。
インナーチャイルドの状態は改善できます。心理学では改善することや克服することを「癒す」と表現することが多いです。
ここでは、なぜインナーチャイルドを癒す必要があるのか、効果と共に紹介します。
幼少期に培った習慣や、常識だと思い込んでいたことは簡単には忘れられません。
過去の経験が今の生きづらさにつながっているので、早急に解決したいと感じるのは当然ですが、まずは自己理解を深めましょう。
みなさんは「いつも似たようなことで上手くいかなくなる」といった経験はありませんか?
それはインナーチャイルドの影響の可能性が考えられます。
インナーチャイルドを癒せば、自分の言動や思考のパターンが見えてくるのです。自己理解が深まれば、自分の行動や思考のパターンを踏まえて「どうすれば対処できるのか」と考え、解決の道が広がります。
インナーチャイルドの症状が強い人は、自己否定しやすいと解説しました。
「自己否定しやすい=自分を受容できていない」ですよね。
インナーチャイルドを癒すことで、自分らしさや自分の価値観、言動を認められるようになります。自分を認められるようになれば、たとえ理不尽なことを言われても「自分が悪い」と捉えなくなるのです。
インナーチャイルドは、主に人間関係に影響します。
・支配的な人に惹かれ、結果的に自分が疲弊していた
・相手に色々求めすぎて疲れさせてしまった
・嫌われるのが怖くて、自分を出せなかった
・見捨てられるのが不安で、相手を脅すような言動をしてしまった
・いつも圧の強い人に目をつけられて、仕事をやめていた
・嫌なこともあるけど、この人しかいないから離れられない
このような経験に心当たりのある人も多いでしょう。
インナーチャイルドを癒せば、人間関係が良好になるだけでなく、自分にデメリットのある関係から離れることもできます。
生きづらさを感じている人の多くが「過去」と「今」を切り分けられていない可能性があります。
インナーチャイルドが傷ついている状態では、過去と同じ状況にであった際に「また同じことが起きた」と感じたり、「どうせこの人とも上手くいかない」と連想してしまうことがあります。
目の前の人物は、あなたの両親とは全然違う人で、過去にあなたを傷つけた人ともそっくりさんではないにも関わらず、先回りして考えてしまうのです。
過去と今を切り分けられれば、たとえば元カレと今の彼氏が同じことをするかもと不安になることはないでしょう。
いよいよインナーチャイルドを癒していきます。
インナーチャイルドを改善する方法は次の順で実践していきましょう。
1.行動や思考の傾向を把握する
2.自分のインナーチャイルドを見つける
3.大人の行為を思い切って責める
4.過去に感じた感情を吐き切る
5.健全な思考を育てなおす
まずは「インナーチャイルドに影響しているか」関係なく、自分の行動や思考のパターンを把握しましょう。
一度に過去のすべてを思い返すとつらくなることがあります。
時間はかかりますが、少しずつ振り返っていきましょう。また、1人で行なわずに専門家を頼って実施することをおすすめします。
ポイントは、泣きそうになったら思い切り泣くことです。傾向の把握の際に、感情に蓋をする必要は全くありません。
自分のインナーチャイルドはどんなものかを見つけていきましょう。
過去に感じていた感情にアクセスしてあげるのです。何がつらかったか、どのような気持ちだったか、どうしてほしかったか、どうなりたかったかを感じてみましょう。
先述の通り、インナーチャイルドとは、幼少期の家庭環境や過去の経験がトラウマとなった感情です。自分の感情を言語化してみてくださいね。
できれば紙などに書き出せるといいでしょう。書き出すことで、頭や胸の中から取り出す作業を疑似体験できます。
大人・親の顔色を見て過ごしてきた幼少期。
親の行動が常識だと思わなければ、過ごしにくかったかもしれません。そのような生活を続けていると、本当に親の言動を容認してしまったり、「親が行っているコミュニケーション」を当たり前に思いやすいです。
インナーチャイルドから癒されためにも、まず一旦は親の行為は間違っていたのだと考えてください。
なかには、実際に親に話す人もいますが、その場合は「あきらめがつく」「和解できる」「さらに否定されて傷つく」のいずれかが待っています。
この「大人の言動を否定する」とは、今の親に直接伝えることではなく、自分で乗り越えるために自分の中に残っている過去の親の言動を否定することなのです。
親や大人を否定する中で、今までにないくらいの悲しみや憎しみ、怒りの感情が湧き上がってくるでしょう。苦しいですが、それ自体はとても自然なことです。
まずは過去に封じ込めてしまった自分の感情を吐き切ること。吐き切るためには、次の方法がおすすめです。
・ノートに書き出す
・ノートに書き出して破り捨てる
・信頼できる人に話す
・大きな声で思いを叫ぶ(防音の効いた部屋など)
・ぬいぐるみに語る
信頼できる人に話す場合、選び方が重要となります。あなたの想いを受け止められそうな人を選んでください。カウンセラーなどの専門家もおすすめです。
感情をすべて吐き切ったら、いよいよ最後のステップとなります。
行動や思考のパターンを把握し、過去と決別して、感情を吐き切るだけでは解決しません。
健全な思考を育てなおす必要があります。
カウンセラーと行う場合は、認知行動療法やスキーマ療法などを用いることもあるでしょう。認知行動療法やスキーマ療法は、生きやすくなるための適切で健全な思考を身につける方法です。
スキーマ療法は、過去の経験によってつくられた深い信念を手放す方法なので、信頼のおけるカウンセラーと実施すると効果的です。認知行動療法を実践後、担当カウンセラーとスキーマ療法に取り組むというパターンなら、互いの信頼関係も構築されているので安心でしょう。
インナーチャイルドは、9タイプに分けられます。先述の通り、複雑化した感情がインナーチャイルドなので当てはまるのは1つとは限りません。
ロストラブは、孤独感のあるインナーチャイルドタイプです。
親との関わりが少ない、もしくは求めている言葉、愛情がもらえなかった経験のある人が当てはまるでしょう。
たとえば、絵を描いてみせても褒めないけど、いい成績を取ったら褒める親がいるとします。
そうすると子どもは、絵を描くのが好きでも描くのをやめたり、こっそり描いて見せなくなったり、いい成績のために自分にプレッシャーをかけて嫌われることや認められないことを過剰に恐れるのです。
ニゲージョンは、いい子を演じるインナーチャイルドタイプです。
親に否定や差別、比較などをされてきた子どもは、相手の期待する人間になるべく「いい子」を演じるようになります。
比較対象としては、きょうだいや同級生、親せきの子などが多いでしょう。
また、少し角度は違いますが「○○くんのようにはならないでね」と、悪さをする子を例に期待をかけてくる親もいます。
エクスペクテーションは、自分を追い詰めやすいタイプのインナーチャイルドです。
親に過度な期待を背負わされることで、不安や恐怖を感じながら物事に取り組む子どもが当てはまります。
不安や恐怖が極限に達した結果、反抗や反発に変化し、非行に走る子もいます。「あんなにいい子だったのにヤンキーになってしまった」は、もしかすると周りの過度な期待によって、押しつぶされた結果の行動かもしれません。
アビアランスは、コンプレックスを感じやすくなるインナーチャイルドタイプです。
世間体を重視する親であったり、周囲を見下して「○○でなければならない」と考えている親に育てるとアビアランスとなりやすいでしょう。
たとえば親が、「成績はいつも上位ではないといけない」「一流企業の就職しか認めない」など、親の価値観で子どもの行動を制限している状態などが該当します。
その結果、完璧主義になって自分を追い込んでしまう人もいれば、人を見下すようになってしまう人、見栄を張るために何でもするようになる人もいるかもしれません。
シークレットは、人に心を開かないタイプのインナーチャイルドです。
秘密のある家庭で育てられた場合に、シークレットとなりやすいといわれています。
矛盾したことを教えられたり、親に嘘をつかれたりした経験という方がイメージしやすいかもしれません。
たとえば、「人に嘘をついてはいけない」と教えられたのに「お父さんに聞かれても知らないっていうのよ」と秘密をつくるように教えられることなどが当てはまります。ほかにも、親の言葉と行動が一致していない場面が多いことも、親を信用できなくなるきっかけとなりやすいです。
ディスライクは、自己否定が強いタイプのインナーチャイルドです。
親に存在や容姿、性格などを否定されて育つことで、自身も自己否定的になってしまう状態をいいます。
いくらほかの人が褒めてくれても「嘘なのでは」「自分はそんなんじゃない」と思ってしまって、周囲と疎遠になることもあるでしょう。
ネガティブ思考といわれやすい人は、ディスライクに当てはまりやすいかもしれません。
ヘルパーは、世話焼きになりやすいインナーチャイルドタイプです。
子ども時代に、親の代わりにきょうだいの面倒を見たり、家事手伝いをすることが多かったりした場合になりやすいタイプ。
子どもとしての振る舞いよりも、なにか手伝いをした、親の役に立った時しか褒められないことで、自分の価値を「手伝うこと」で見出すようになっていきます。
徐々に、助けたいのではなく「褒められるために助ける」「認められるために手伝う」と見返りを求めやすくなります。
インダルジは、自己中心的なインナーチャイルドタイプです。
過保護な親に過剰なまでに大切に育てられ、甘やかされて育った場合になりやすいタイプ。
何をしても許されたり、親が何とかしてくれる経験を重ねることで、自分で解決する力がつかずどんどんワガママになっていきます。
適切なコミュニケーションを学んでこなかったので、ミスをしても誰かが何とかしてくれると思ってしまい、周囲とトラブルになりやすくなります。
ディスペンデンスパーソンは、逃げグセのあるインナーチャイルドタイプです。
親が依存症である場合、親の姿を見て育つことによって、親と同じような行動しかとれなくなる傾向があります。
依存症者の子ども全員ではないですが、ほかの要因も重なって「親しか頼れない」といった状況に陥っているとなる可能性は高まるでしょう。
依存症者の特徴の1つである逃げグセが子どもにもうつってしまっているケースです。
インナーチャイルドを癒すことは、みなさんの心と体の健康度をアップするためにも重要です。
過去のことと切り替えられていないことが、今の社会生活や人間関係に影響してしまっています。
しかし、今の苦しみは決してみなさんのせいではありません。これからインナーチャイルドをよく理解し、寄り添い受け止めてあげることで、自分を生きやすくしてあげてください。
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