あなたは生きづらいと感じたことがありますか?
その感覚を自分のせいだと思っていないでしょうか?
アダルトチルドレンとは、幼少期の家庭環境の影響で、大人になった今でも生きづらさを感じている状態です。
今回は、生きづらいと感じている大人の皆さまに向けて、アダルトチルドレンの原因や症状、種類、治し方などを紹介します。
アダルトチルドレン(Adult
Children:AC)とは、子どもの頃の心的外傷体験によって、傷ついた状態で大人になった人のことをいいます。
しかし、アダルトチルドレンという言葉がひとり歩きしていまい、本来の意味を理解していない人も多いかもしれません。まずは、アダルトチルドレンの定義を解説します。
アダルトチルドレンの概念は、アメリカで誕生しました。
もともとは「Adult Children of
Alcoholics」の略称であり、アルコール依存症の親に育てられた子どものことを指しています。
その後、薬物依存や虐待、機能不全家族などのもとで育った子どももアダルトチルドレンになるリスクが高いということがわかっています。
アダルトチルドレンにはとある特徴や症状がみられます。
全員に共通するわけではないですが、アダルトチルドレンである本人たちはこれらの特徴や症状を「自分のせい」と捉えがちです。
アダルトチルドレンの特徴は以下の通りです。
・依存しやすい
・自己肯定感が低い
・自己否定的になりやすい
・自尊感情が低い
・他者の承認を強く求めている
など、自分だけでは自分の価値を認められず、他人からの言葉や態度を求めやすい傾向があります。
心理面、対人面、社会面で次のような症状が出やすいことがわかっています。
・心理面
強すぎる責任感、深い孤独感、罪悪感、無価値感 など
・対人面
人を信じられない、人をコントロールしたい・支配したい
深い関係を避ける、人にコントロールされやすい など
・社会面
完璧主義、真面目すぎる、楽しむことが苦手
趣味がない、空気を読みすぎる など
これらの症状は、育った家庭の影響が大きいため、アダルトチルドレン全員に同じ症状が出るとは限りません。
アダルトチルドレンとなる背景には、さまざまな原因が影響し合っているといわれています。
本人も気づきにくく、きっかけがない限り、自分の育った環境を当たり前と捉えやすいのです。ここでは、アダルトチルドレンになるリスクが高まるさまざまな原因を紹介します。
「虐待=身体的」と捉えていませんか?
虐待は暴力など身体的なものとは限りません。まずは虐待には以下の4種類があることを理解しましょう。
・身体的虐待:殴る、蹴る、叩く、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、拘束するなど
・心理的虐待:脅し、無視、きょうだい差別、ほかの家族への暴行を見せる など
・性的虐待:子どもに対する性的行為、性的行為を見せる、性器を触る・触らせる
など
・ネグレクト:家に閉じ込める、食事を与えない、車内に放置、病院に連れて行かない など
厚生労働省の令和元年調査
では心理的虐待が50%、身体的虐待が25%前後と発表されましたが、複数の虐待が絡み合っていることもあります。
機能不全家族とは、家族として機能していない状態を指します。
本来、家族とは協力し合い、尊重し合い、大切にしあう関係性です。
機能不全家族とは、本来の家族の形ではない状態のことで、具体的には以下のような状態であるといわれています。
・強固なルールや役割が存在している
・家族間の共感が欠如している
・親子の立場が逆転している
・両親片方の負担が大きすぎる
・社会から孤立している
・雰囲気が非常に暗い
・プライバシーがなく、境界線があいまい
このほかにも、絶対的権限を持つ存在(両親または父母片方)の気分に合わせなければならない空気感なども当てはまるでしょう。
毒親とは「子どもの毒となる親」の略称といわれていますが、「毒」とは一体何をさすのでしょうか。
毒親にはっきりとした定義は存在しませんが、次のような特徴がみられます。
・過保護/過干渉
・子どもの言動を否定する
・子どもの夢を否定する
・親が正しいという価値観を植え付ける
・条件付きの愛や肯定しか与えない
・子どもと競おうとしてくる
・子どもに依存している
・子どもを支配しようとする
・親自身が完璧主義であり、強制してくる
子どもからしたら、幼いころに正しさを教えてくれるのは「親」と思うことは当然でしょう。
しかし、親自身が毒となってしまうと、間違った価値観を植え付けられてしまうのです。
毒親とも少し話が重なりますが、過干渉もしくは過保護である親のもとで育った子どもはアダルトチルドレンになるリスクが高いといわれています。
<過干渉な親の特徴>
・子どもが話し出す前に遮る/話を取る
・子どもの選択肢を尊重しない
・子どもの人間関係に意見を押し付けてくる
・悪いところばかり探して、褒めない
<過保護な親の特徴>
・子どもがやる前に手出しをする
・なんでも買い与えてしまう
・なんでも言うことを聞いてしまう
・失敗させないように手を尽くす
・考えさせず、指示やアドバイスをする
過干渉も過保護も、どちらも子どもの成長の機会を奪っていることに親は気づいていません。
親が精神的に幼くなる原因の1つは、親自身が虐待を受けていた、もしくは機能不全家族で育った経験などが考えられます。
特に以下のような特徴を親が持つ場合、「親子の立場が逆転する」「家族間の共感力が欠如する」「両親片方の負担が大きすぎる」状態になりやすいです。
<精神的に幼い親の特徴>
・感情のままに行動する
・精神的に不安定
・子どもの人生をコントロールしようとする
・自他ともに完璧主義を求める
・放任主義
・子どもの変化を拒む
・怒鳴って押さえつけようとする
・子どもに機嫌を取ってもらおうとする
そのほか親自身がSOSを発することができず、一番近くにいる子どもに無条件に受け入れてもらおうとしてしまう傾向があります。
最も典型的なアダルトチルドレンの家庭です。
アルコール依存症やギャンブル依存は、家族が巻き込まれるケースが非常に多い精神疾患といわれています。
物事を自分の都合のいいほうに考えやすく、周囲のことも思い通りにしたい気持ちが生まれやすいからです。
この状況によって生まれやすいのが「共依存」。共依存とは互いに「イヤなところや困るところはあるけど離れられない」「わかっても離れるのはさみしい」という状態です。依存症だけではなく、アダルトチルドレンになるリスクが高い家庭で育った子どもは、親以外にパートナーと共依存関係になることもわかっています。
原因や特徴は紹介しましたが、「自分はアダルトチルドレンなのだろうか?」と思う人も少なくないでしょう。
ここでは、アダルトチルドレンのチェックリストとアダルトチルドレンの6タイプについて解説します。
自分がアダルトチルドレンなのか、セルフチェックしましょう。
ただし、このチェックリストは簡易的なものなので参考程度にとどめてください。
□自分に自信がない
□自分のことを否定しやすい
□恋愛でトラブルが起きやすい
□白黒はっきりさせないと気が済まない
□必要以上に相手に尽くしてしまう
□他者といると自分のことがわからなくなる
□褒められても疑うor受け入れにくい
□助けを求めるのが苦手
□人に認めてほしい思いが強い
□楽しむことが苦手、趣味がない
□表情がわかりにくい、出にくい
□プレッシャーを感じやすい
□他者に依存しやすい
□人が離れていくのが怖い
□権限を持つ人に対して萎縮しやすい
10個以上当てはまればアダルトチルドレンの可能性が高いでしょう。
また、次に紹介する6つのタイプに当てはまるかも確認してみてください。
親の期待に応えることや、親の機嫌を取るために一生懸命となるタイプです。
たとえば、勉強やスポーツ、表彰されるようなことなどがあげられます。
周囲から見れば「努力家」と思われやすいですが、本人は自分のためではなく「親の期待」「親の機嫌」に敏感である結果、空気を悪くさせないために行動しているのです。
失敗や挫折に弱く、心が急に折れたり、爆発することもあります。
ヒーローとは真逆で、問題行動を起こすタイプです。
スケープゴートは、問題行動を起こすことで家族のなかの「悪者的役割」を引き受けています。悪役を担うというのは、家族のはけ口や犠牲の役割のことです。
たとえば、本人は悪いことをしていないのに代わりに謝ったり、責任を負わされたり、罵倒されたりなどがあげられます。
家族の中で気配を消し、主張せずに、なんとか生きているタイプです。
存在感が薄く、無視されたり、放っておかれることが多いといわれています。
このタイプが誕生した要因の1つがネグレクトです。ネグレクトは無視された状態でも、生き抜く必要があったため、空気としてなんとかやり過ごす状況しか選べなかった状態となります。
ただし、近年の傾向ではネグレクトではなくても、親の操り人形となっている場合などにロストワンしやすいケースが増えているようです。
次のようなことを行って、献身的に家族を支えている子どもが当てはまるタイプです。
・幼いころから家事をしていた
・弟や妹の面倒を見ていた
・遊ぶことを許さず、家族のために時間を使っていた
・必要以上に気を遣っていた
・誰かのミスなどの責任や後始末をしていた
特に長女や長男がなりやすいタイプかもしれませんが、兄や姉が自由人もしくは優遇されている場合にも起こりうる状態といわれています。
家族の雰囲気を悪くさせないために、ふざけたり、冗談を言ったりするタイプです。
道化師タイプともいわれ、常に仮面をかぶって雰囲気を壊さないように生きています。実はよく見ると目が笑っていないのですが、だいたいは「面白い」「明るい」「おどけてる」という印象を持たれやすいでしょう。
また、実はビクビクしていて繊細で敏感な子が多いとも言われています。
同じ世話焼きであるケアテイカーとの大きな違いは、「相手のためにならない尽くし方」をすることです。
支えになろうとした結果、相手の悪い部分を助長させてしまうことが多いといわれています。
わかりやすい例は、無意識にだめ男を作り上げてしまう女性です。
ケアテイカーは、慰めたり話をじっくり聴いたりする傾向がありますが、イネイブラーはアルコール依存症の人にお酒を買ってしまったり、ギャンブル依存症の人にお金を渡したしまうなど、行動面や経済面で相手を支えてしまう傾向があります。
イネイブラーは「見返りを求めない献身的で歳暮のような女性」であることが多いため、男性よりも女性に多いとも考えられているようです。
アダルトチルドレンとは、幼少期のトラウマの影響によって、大人になった今も生きづらさを感じている状態のことです。
病気ではないため、病院に行って「診断名はアダルトチルドレンです」といわれることはありません。しかし、二次的な精神疾患が発症するリスクは高いと考えられています。
二次的な精神疾患とは、アダルトチルドレンなど本人が持っているものや生まれ持った特性の影響によって、ストレスを必要以上に抱えてしまうことで発症する病気のことです。
原因や特徴で解説したように、アダルトチルドレンは全員が同じ症状を持っていたり、同じタイプであるとは限りません。だからこそ、発症する精神疾患も1つではなくさまざまなものがあります。
依存症とは、アルコールやギャンブル、人間関係など、特定の物質や行動をやめたくてもやめられない状態のことです。
やめたくてもやめられない(コントロールできない)のですが、自覚症状はないことが多いため、治療開始までに時間を要することが多いといわれています。
依存症の症状には、コントロールできない、のめり込んでしまう、問題から目を背ける、家族を巻き込むなどがあり、日常生活にきたしていても放置している人が多いです。
親がアルコール依存症である姿を見ていても、いつの間にか自分がそうなってしまうという人も少なくありません。
うつ病とは、気分の落ち込みやイライラなどの精神症状と、疲れやすい、食欲不振(もしくは過食)などの身体症状が出現する病気です。
アダルトチルドレンの人は、自己否定的になりやすく、自信がないことから日々生きづらさを感じて生きている人が多いといわれています。
不安感や無価値感、虚無感などの気持ちはうつ病とも共通しており、うつ病を含む気分障害になりやすい人は多いです。
不安症とは、過剰な不安や心配によって日常生活に支障をきたしている状態です。
私たちは少なからず心配や不安になることはありますよね。しかし、不安症の場合は程度が「過剰」であり、身体症状にも現れることがあります。
<不安症の種類>
・全般不安症
・社交不安症
・パニック症
・限局性恐怖症
・広場恐怖症
・選択性緘黙
・分離不安
・物質・医薬品誘発性不安症
アダルトチルドレンは、幼少期から親の顔色を伺ったり、気を遣って生きてきた人など、常に「不安」だった人も少なくありません。
しかし、常に不安が当たり前だったことから受診が遅れることもあります。大人になって恋愛や仕事などで上手くいかなくなり、発覚するケースもよく見られます。
摂食障害とは、食事の関連行動の異常によって、心身と日常生活に影響を及ぼしている障害です。
たとえば、必要量を食べられない、食べすぎを自分でコントロールできない、食べたものを意図的に吐き出すなどがあります。
特に10代~20代女性の割合が高い病気ですが、さまざまな背景から誰でもなりやすい病気の一つです。
摂食障害の原因の1つが、家庭環境や自信のなさ。幼いころから、我慢をしたり、自分の感情を表現できなかったり、受け入れてもらえなかった経験から、そのストレスを食事で発散する例はよく見られます。
摂食障害には「神経性やせ症」と「神経性過食症」がありますが、特にアダルトチルドレンの特徴を持つ人は「神経性過食症」との関連性が深いといわれています。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、強すぎるショック体験や精神的ストレスの影響が、時間が経過しても続いている状態です。
強い恐怖心や回避行動などが伴い、生活に支障をきたしている方が多くいます。特に自然災害や人災等の影響、事件や事故に巻き込まれたり、ハラスメントやDV被害にあった人などに多く見られますが、幼少期の体験の影響も大きいです。
アダルトチルドレンとPTSDの関連性は深く、特に複雑性PTSDを伴っている人が多いといわれています。
複雑性PTSDとは、さまざまなこころの傷が重なり、慢性的な外傷体験となっている状態のこと。たとえば、親に受け入れてもらえなかった経験の傷が言えないうちに、嫌な体験が重なって「生きづらい」と感じやすくなってしまっている状態です。
二次障害以外に、症状が似ている障害があります。
発達障害や愛着障害は、アダルトチルドレンの特徴や行動パターンと近い点もあるため、病院へ受診してはじめて本来持つ障害に気づくこともあるのです。
発達障害とアダルトチルドレンの大きな違いは、先天か後天かということ。発達障害は生まれ持った脳の働きによる障害ですが、アダルトチルドレンは環境の影響が大きいとされています。
ただし、発達障害を持って生まれたけれども、「育てにくい子」扱いをされてしまってアダルトチルドレンとなるケースもあります。特に発達障害の二次障害(うつ病など)がある人は、アダルトチルドレンの場合が多いです。
愛着障害とアダルトチルドレンの大きな違いは、病名か病名ではないかということ。アダルトチルドレンは状態を表しますが、愛着障害は病名・診断名となります。
愛着障害の特徴(診断基準から一部抜粋)は以下の通りです。
すべて5歳までに発症するといわれています。
<反応性愛着障害>
・さまざまな対人関係で矛盾した反応を示す
・過度の警戒心や回避行動
・自身や他者への攻撃性
・社会的な相互関係の能力も持っている
そのほか、同世代の子との交流の乏しさなどを持つ人も多いです。
<脱抑制型愛着障害>
・誰でも構わず愛着行動を示す
・注意を引こうとする振る舞いがある
・協調性が乏しい
・なじみのない相手との社会的相互関係が上手くいかない
アダルトチルドレンを克服するには、安全性の確保が必要不可欠です。
否定したり、罵倒したり、コントロールしたりしてくる相手が身近にいると、なかなか問題は解決できません。まずは可能な範囲で離れること、難しい場合は安全な相手との関係を築くことを大事にしましょう。
安全な場所の1つが、医療機関やカウンセリングルームです。
専門家が安全な場を作り出し、過去の影響から解放できるよう、共に考えてくれます。
また、一緒に過去を振り返ったり、話を聴いてくれるだけでなく、アダルトチルドレンの正しい知識や生きやすい考え方も身につけられるでしょう。
自助グループとは、同じような経験をした人達が集まっている会のことです。
仲間や理解者がいることの安心感や、乗り越えるための勇気をもらえるでしょう。
ただし、心身に不調がある場合は医療機関(精神科、心療内科)にかかることをおすすめします。
アダルトチルドレンは、環境の影響から間違った価値観や思考を植え付けられている状態です。
その状態を自覚し、視野を広げていくことで安定的な対人関係は築けます。今、生きづらさを感じている人は正しい知識の一環として、心理学などを学ぶのも一つの方法かもしれません。
まずは自分の状態を自覚して、自分を大切にしていくための一歩を踏み出しましょう。
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