私たちの身の回りには「色」つまり「カラー」が溢れています。今あなたが触っているスマホやパソコン、着ている服は何色をしていますか?
色を見ると「元気が出る」とか「癒される」といった印象を受けた経験がある方は多いと思います。色には、人間にイメージを持たせたり、心理面に対して影響を与えたりする力があるのです。
そこで、今回の記事では「色が与える心理効果とは何か」や「色はどんな印象と効果を持つのか」また「色別にどのような印象効果があるのか」について詳しく紹介していきます。
最初に「色」とは何なのかについて簡単に触れておきます。色とは「物に当たった光が反射して、人間の目に入ることで認識される」という仕組みになっています。例えば、机の上に置いてある赤いりんごに光が当たると、りんごの表面は赤い波長の光だけを跳ね返す性質があるので、目に赤く映るというわけです。
ちなみに、真っ暗な部屋の中で赤いりんごを見ても赤く見えないのは、りんごの赤色を反射させるだけの光が足りないのが原因です。りんごの赤色が失われたわけではなく、電気をつければ電灯の光がりんごの表面に反射してちゃんと赤く見えます。
そして、人間がりんごを見て「赤い」という認識を持った時に、それが「きれいな赤色をしていてとっても美味しそう!」と感じたりするのが、まさに色が持つ心理的効果なのです。
(きれいな赤色をしたりんごを見ても、りんごが嫌いな人にとっては食べたいと思わないでしょうが、そういった人の好みも含めたところで、色は心理的効果を持っているということです。)
りんごの例えのところで触れたように、「美味しそう」とか「りんごは嫌いだ」など、赤い色を見ると何かしらのイメージや印象を人間が抱くことを専門用語で「色彩感情」といいます。
とくに難しく構える必要はなく、色というものを目にした時に「派手な色だなぁ」や「とっても似合っている!」といった直感で持つイメージや印象が色彩感情なのだと思ってください。
「色には色彩感情というものがあることは分かったけど、具体的にどんな印象や効果があるの?」と思われた方のために、次は色の印象と効果についてわかりやすく説明します。
まずひとつ目に、色には回想力・暗記力・認識力を増すという「心理的」効果があります。また、色によっては理解・学習・誘導が容易にできるというメリットもあります。「オレンジ色の文房具を使って勉強すると、記憶力が良くなる」と言われているのは、オレンジ色の心理的効果を活用した事例です。
次に、色が人間の神経に影響を与えることで「生理的」な効果を及ぼします。明るい赤色を見ると、交感神経が刺激されて血圧が上がり、反対に青や緑にはリラックスさせる効果があるということが研究により明らかになっています。
例えば、スペインの闘牛。闘牛士が赤い布をはためかせると牛が興奮したり、新緑の季節に山登りをして、緑に囲まれると気分が落ち着くのが生理的効果だといえます。
さらに、「軽い・重い」「柔らかい・硬い」といった「物理的」な印象を与える効果もあります。例えば、明るくて白っぽい色は、軽くて柔らかいティッシュなどが連想され、濃い赤茶色を見ると、硬くて重いレンガが思い浮かぶというイメージです。
色には、暖かさや寒さを想起させる効果もあります。青や青紫、青緑などは「寒色」と呼ばれ、読んで字のごとく「見ると寒さを感じる色」のことです。一方、赤や黄色、オレンジ色など、見ると暖かい気持ちになれる色は「暖色」と言われています。
冬の寒い時期に、部屋のインテリアを暖色でコーディネートすると人間の体温が上昇し、逆に夏の暑い日に寒色で揃えた環境にいると体温が下がったという研究結果も出ているくらいです。
さらに、「膨らんで見える」「小さく見える」といった物理的な印象を与える効果もあります。例えば、黒や濃い緑や青などは「収縮色」とも呼ばれ、一回り縮んで見える特徴を持っています。逆に、赤や黄色などの「膨張色」を見ると、一回り大きく見えるのです。
物理的な印象を使ったコーディネートとして、「太って見られたくないから、明るい色の服は着ない」や「痩せて見られるのが嫌だから、膨張色の服を着る」といったものがあります。
赤やオレンジ、黄色といった暖色系の食べ物を目にすると、「美味しそう」や「温かそう」または「辛そう」といった感情が生まれるとともに、人間の交感神経に影響して血圧・脈拍が上昇し、食欲が増すという効果があります。
逆に、寒色系の青い食べ物は「美味しくなさそう」や「冷たそう」といった印象を持たせるとともに、血圧や脈拍が低下して食欲が減退するという効果を持っています。研究事例として、100%真っ青な柄のお皿を使って食事したところ、食べる量が減ったそうです。(実際に体重が減るかどうかまでの保証はありませんが…)
ただし、完全に真っ青なお皿ではなく、一部に青い柄が入っているお皿を使ってしまうと、逆に食事量が増えることもあるのでご注意ください。
赤は、「情熱的」で「活発」なイメージを想起し、エネルギーに満ち溢れた色です。そのため、元気がない時や気分を高めたいという時には赤を取り入れて、エネルギーを補給するのに活用できます。
一方で、赤は自己主張が強く目立つ色でもあるため、信号機や消化器、サイレンなど、危険性を知らせるサインとしても使われています。
赤と黄色の間であるオレンジは「楽しい」や「温かい」といった印象を持たせる色です。オレンジの温かみに触れると、不安や緊張がほぐれて安心できる効果があります。また、オレンジはカジュアルで陽気な雰囲気があるので、親しみやすくて家庭的、社交的なイメージも想起するというのも特徴です。
太陽の色に一番近いのが黄色で、太陽のように希望や喜びを与えてくれる結果、楽しい気分にさせてくれる色です。また、黄色はとても目立つ色で、危ないことを表すサインとしても使われています。人工物では道路標識や踏切などに、自然界ではスズメバチやトラの縞模様に黄色が入っています。
暖色でも寒色でもない「中間色」である緑は、一番刺激が少ない色です。また、緑は植物の色でもあるので、自然で穏やか・成長性が感じられ、見る人を落ち着かせ安心させる色だといえます。
一方、刺激の少ない緑には「受動的・保守的」といったマイナスのイメージもあるため、アクティブな印象を好む人にとっては好まれない傾向にあります。
青には、人を落ち着かせて感情を鎮めるという効果があるとともに、「クールで知的・爽やか」といったイメージのある色です。とくに、白とのコンビネーションにより、クリアで透明感のあるイメージが生まれ、「信頼感がある・誠実」な印象を出すことができます。
一方で、青は人間の副交感神経に作用して脈拍や体温を下げる効果もあり、「落ち込み」や「悲しみ」を想起するという特徴も持っています。
攻めの赤と守りの青の中間に位置する紫は、「優雅で上品・高貴」なイメージを持たせる色で、敷居の高さや妖艶さ、魅力的な大人の女性を想起させます。紫色の染料が高価であったことに由来してこのような印象が持たれていると言われている一方、遠い昔から占い師が紫色の法衣をまとっていたり、宗教的な側面も強く「不安・不吉」というマイナスイメージも持っています。
潔白できれいなイメージの白からは、清潔感があり純粋な印象が呼び起こされます。日本人は白を好むため、飲食店や病院では白を基調とした制服が使われているのをよく目にすると思います。神話でも天使や女神が白色の衣服をまとっているように、白は「潔白」であると同時に「善」の象徴としての意味合いも持っています。
黒は「高級感・重厚感」を思い起こさせる色であると同時に、男性的で都会的、洗練された印象も持ち合わせています。黒いピアノや高級車を想像していただけるとわかりやすいかと思います。一方、黒は「死」や「悪」の象徴であるという側面もあり、不吉で恐怖を抱くイメージも持っています。悪魔によく使われる色であるとともに、葬儀の場では黒の喪服が着られています。
このように、色によって実にさまざまな印象や効果があります。普段何気なく見ている信号機の赤色にも「目立つ」という赤の特徴が活かされているのです。この機会に、色が持つ印象や効果に興味を持っていただければ幸いです。