ダイエットや健康ブームにより、ヨガにも人気が集まっています。
ヨガの魅力の一つは、運動の苦手な人でも気軽に入門できる敷居の低さでしょう。
そこで日々ヨガを意識し、ポーズをしてみることや瞑想を取り入れ始めた人も多いはずです。
しかし、本来のヨガの道理や現在までの歴史など、体系化された内容について詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。
実は知っているつもりで知らなかったヨガについて、本記事では、発症の起源から現在までの遍歴などを深堀していく特集です。
ヨガへ興味を持って取り組む姿勢については個人差があります。
とくに、ヨガ初心者でますます興味が湧いてきた頃の人などは、ぜひ見てください。
ヨガの発祥がインドであることはよく知られています。
ただ、具体的にいつ誕生したのかを知っている人は少ないでしょう。
ここでは、ヨガの起源について解説していきます。
ヨガが誕生した起源は、約4500年前のインドでした。
その時代は、インダス文明があった頃ともされています。
日本は縄文時代の最中で、狩猟民族が台頭していた頃です。
インダス文明の代表的な都市モヘンジョダロの遺跡には、発掘された陶器などにポーズを取る人物や、瞑想する神像などがたくさん見られます。
おそらくヨガの起源はこのインダス文明の頃で、そこから時を経て現在のヨガに発展していきました。
インドでは高度で崇高な文明が既に存在していたことになります。
インダス文明と耳にすれば、世界史の教科書でも勉強した「4大文明」の1つとして記憶していることでしょう。
モヘンジョダロやハラッパーといった遺跡群が有名です。
ただ世界史の時間だけでは、表面的に触れただけで試験問題に出題された程度ではないでしょうか。
インダス文明を代表する遺跡の中からは、パシュパティ(獣の王)と呼ばれるモチーフ(印章)が発掘されました。
パシュパティとは、シヴァ神と呼ばれるインドの神様の1つの姿です。
獣に囲まれパドマ・アーサナ(蓮華座)のような姿で座っている描写が描かれていました。
この描写はまるで瞑想中の修行者を連想させ、インダス文明の時代にヨガはすでに存在していたのではと推測されています。
他にも、多くの女性像も出土され、シャクティと呼ばれる女神を表現しているようです。
シャクティは、ハタ・ヨガという流派において重要な女神とされています。
ヨガに関連するものとして、最も古い書物が「ヴェーダ」です。
ヴェーダは、インド最古の聖典とされています。
神から授かった言葉を伝承するための聖典です。
その中に「Yuj(ユジュ)」という単語が登場します。
ヴェーダが書かれた頃では、ヨガとしての意味や概念は見当たりません。
しかし、家畜を繋ぐ道具を意味したYujiは「繋ぐ」という意味へと変容していきます。
この言葉こそが、後にヨガの語源となっていくのです。
やがて、ヴェーダという聖典を哲学的に説明した「ウパニシャッド」という教典が誕生しました。
紀元前1000年頃の古典である「ウパニシャッド聖典」には、「ヨガ」という言葉が記されています。
ウパニシャッドとは、サンスクリット語(古代および中世のインド・東南アジアでの共通語)で書かれ、ヨガの奥義書とされるものです。
複数あるウパニシャッドの中でも「カタ・ウパニシャッド」と呼ばれる経典には、ヨガについての最古とされる説明書きが残されています。
ヨガでは、人の在り方を見つける方法、あるいは苦悩から解放する指南方法として、ヨガが人々の間に伝わっていったのです。
ヨガには複数の経典や指南書が残されています。
一般的には、実践のためのエクササイズ方法をメインにしていますが、古代インドの哲学的な内容も重要視されています。
その哲学に関することが記されたガイドブック的なものの一つが、「ヨーガ・スートラ」です。
紀元前2世紀のインド文法学者パタンジャリによって編纂されたヨガ哲学の根本教典ともされ、ヨガを通じて本来の自分を追求・体験するための理論が書かれてます。
ヨーガ・スートラには、「心の作用を止める」という表現があります。
これは無感情な人格を目指す意味ではなく、感情に振り回され動揺することのない落ち着いた心の状態を指します。
そのため、自身の感情との向き合い方を理解することを指南した内容です。
一般的にイメージするヨガのポーズなどを体系的に記したものではなく、瞑想や安座の修行に関する心構えなどが書かれています。
ヨガポーズが体系的に記されるようになるのは、紀元後12〜13世紀頃です。
現代に通じる「ハタ・ヨガ」が登場することで広がっていきます。
ヨーガ・スートラは、古代インドのインダス文明の頃から育まれたヨガの概要を、さらに説明書として定義し、どこをゴールにするのかなど明確な指針を示した経典です。
この中には、アシュタンガヨガ(八支則)と呼ばれる、ヨガのゴール「悟り」へ到達するための8つの段階が記されています。
● ヤマ(禁戒)・・・暴力や盗みなどはいけない心得
● ニヤマ(勧戒)・・・向上心を持つなどの心得
● アーサナ(坐法)・・・深い瞑想のために身体を鍛えて心を整える意味
● プラーナヤーマ(呼吸)・・・瞑想へ集中する呼吸を整える
● プラティヤーハーラ(感覚の制御)・・・動じない精神を作る
● ダーラナ(集中)・・・長時間集中する
● ディヤーナ(瞑想)・・・雑念からの開放や感情を制御する
● サマーディ(三昧)・・・ヨガの最終目標で煩悩から解放され悟りを開いた状態
ヨーガ・スートラでは、瞑想と座法を重点的に置く静的ヨガのことが記されています。
一般的なヨガポーズのとり方ではなく、心のコントロール方法などメンタル面について書かれているのが特徴です。
現代のヨガにも継承された重要な経典とされています。
他にも、ヨガについての関連した教典に「バガヴァッド・ギーター」があります。
バガヴァッド・ギーターの中では「〜ヨガ」と銘打った教えが復数登場する箇所があるからです。
瞑想を主流としたのがヨガの古典的な考え方ですが、瞑想以外の方法も説かれています。
バガヴァッド・ギーターは主に4つのヨガの概念が特徴的です。
自分自身に与えられた全ての役割についてヨガとして遂行する考えです。
執着を手放してエゴを捨て真実に近づくことが説かれています。
カルマとは、サンスクリット語で「行為・業」という意味です。
人が誕生し今日までのすべてのおこない(カルマ)が人生を作り出します。
膨大な人生の全てを瞬間的にヨガとして実践するのがカルマ・ヨガとされているのです。
カルマ・ヨガのポイントは、時流に執着しないことです。
ジニャーナもしくはギャーナ・ヨガは、宇宙や自分自身の本質とは何かを知り真理に到達するためのものです。
あらゆるヨガでの共通項でもあり、「本当の自分」を知ることが目的となります。
そのためには、正しい知識を得る必要があるでしょう。
しかし、知識を暗記するだけでは意味がなく、真実を体験し実態のある知識を経験することを説いています。
常にカルマ・ヨガと対の存在として捉えています。
バクティ・ヨガは、神への純粋な信愛からエゴを手放し純粋な状態になる概念です。
インド古典思想では「ブラフマン」と呼ばれる宇宙意識が登場します。
総合的な神の姿とされ、全ての神々が1つの真のブラフマンだと考えられました。
物質世界に惑わされ苦悩や迷いを取り除きたいのなら、神を前ではエゴを手放し心から信愛するためのヨガです。
ラージャ・ヨガは、瞑想を実施することで真理と一体になる考えです。
アーサナ(ポーズ)や呼吸(プラーナヤーマ)、瞑想による考えがラージャ・ヨガの基本とされ、現在最もポピュラーなヨガとされています。
当時は出家して修行するものだったので、一般人にはあまり知られていなかったものです。
自分の心に向き合いコントロールすることにより、迷いにも打ち勝てる軸を作り、真理に到達することが目的となります。
12〜13世紀頃から、ハタ・ヨガと呼ばれる理論も誕生しました。
それまでのヨガは、瞑想や座禅が中心でしたが、そこへアーサナ(ポーズ)・呼吸法(プラーナヤーマ)の2つを加えて主軸にしたものです。
ハタ・ヨガの概念こそ世界的に広がった、現代ヨガの原型とされています。
ハタ・ヨガは、ポーズを取り入れたヨガの種類の中で最古のものとされています。
ハタ・ヨガの表記にある「ハ」は、太陽=陽を表し、「タ」は、月=陰を意味したものです。
太陽と月は相対的に存在している象徴でもあり、この2つを統合し調和(ヨガの本来の意味)させることを指しています。
世の中には相対的な対象がたくさんあることを、現代人は忘れがちです。
太陽と月に限らず、男女、陰陽、心体などがあげられるでしょう。
また呼吸も吐く・吸うも対照的です。
ハタ・ヨガでは呼吸のコントロールによって、人間の原動力「気」を意識し精神面を鍛えるヨガとされています。
運動量が多いことや集中力も必要になるので、エクササイズとしても認知されるようになりました。
ハタ・ヨガが現代に通じるほど浸透してポピュラーになった理由としては、おもに2つのメリットが考えられるでしょう。
● 初心者が気軽にできる
● ストレス解消が期待できる
ハタ・ヨガの最大のメリットは、難しいことを抜きにして初心者から気軽に始められることです。
ポーズは、ほぼ無理なくできる範囲のものばかりで構成されています。
ヨガの流派には、激しい動きを要するものもあり修行を積んだ中級者〜上級者向きです。
その点、ハタ・ヨガは呼吸に意識を向けて、ゆっくりと動作をしながらチャレンジできます。
もう一つは、ストレス解消効果が期待できる点です。
現代社会において、さまざまなストレスを受けることがありますが、上手く解消できれば問題ありません。
ところが、ストレスを発散させず溜め込んでしまう人も増えてきました。
そこでハタ・ヨガを習慣化すれば、副交感神経が刺激されストレス解消ができるのです。
ここでは、現代に伝わる主なヨガの種類を紹介します。
ひとことでヨガと言っても、かなり複数の流派が存在することがわかるでしょう。
ヨガの中でも最古とされている原点とされる流派です。
動的なアーサナ(ポーズ)にプラーナヤーマ(呼吸法)を加えたヨガの基本が学べ、動きに集中しながら心体を一体化させバランスを整える目的があります。
柔軟性を高める目的や、体系的にヨガを学びたい人におすすめです。
アイアンガーヨガとは、B.K.S.Iyengar(アイアンガー師)によって編み出されたヨガの流派です。
「万人のためのヨガ」とも称され、誰でも効果を実感できるメソッドとして確立されました。
特徴としては、正しいアーサナに特化した点でしょう。
仮に、ケガや故障がある部分も負担がなく全身のコンディションを整えられることを主旨にしています。
ヨガの方法としては珍しい、道具を使用しておこなうのも大きな特徴の1つです。
アシュタンガヨガは、シュリ・K・パタビジョイスが作った流派です。
心身の健康を目指しながら自己実現を目標にし、呼吸・視線・動きによる精神統一、集中力などをメインにしています。
現代のパワーヨガの前身とされ、ハイレベルなアーサナが特徴です。
医師のスワミ・シバナンダが作った流派です。
基本ポーズの間に、シャバアサナ(屍のポーズ)を入れながらおこないます。
体を動かさずに無の意識になることで筋肉や精神をリセットし、ポーズの効果をより浸透させる方法とされています。
とくに精神バランスを整え、緊張を和らげるのに最適なヨガです。
今では、ヨガは世界的なブームを迎え、すっかりと定着しているエクササイズ、および概念といえるでしょう。
では、ヨガが誕生して以来、世界へどのように普及して変遷するようになったのかを、主な年代ごとに見ていきましょう。
● 紀元前2500年頃〜 インダス文明遺跡にて、ヨガの起源とされる形跡が発見される
● 紀元前300年頃〜 カタ・ウパニシャッドにてヨガの説明が史上初めて文献に登場
● 400年頃〜 ヨガ最古の体系的文献「ヨガ・スートラ」成立
● 1300年頃〜 アーサナと呼吸法による「ハタ・ヨガ」が誕生
● 1600年頃〜 スヴァートマーラーマ著「ハタヨガ・プラディーピカー」で体系化
● 1920年代〜 インドにて世界初のヨガ大学の設立
● 1970年代〜 第一次ヨガブーム(アメリカのヒッピームーブメントでの瞑想体験)
● 1990年代〜 第二次ヨガブーム(ハリウッドセレブを中心に、瞑想とエクササイズ)
近代から現代に至る約100年、ヨガは、インドの修行者向けの習わしから、全世界向けにエクササイズとして取り組めるように変貌して来たことが特徴です。
時期や場所によっては社会的ムーブメントとなったこともあり、セレブによるスタイリッシュなエクササイズとしても認知度を拡大させていきました。
インドから欧米を中心に広がったヨガは、当然日本へも波及効果がありました。
では、ヨガが日本に普及して変遷していった経緯についても見ていきましょう。
● 平安時代〜 中国の唐より瑜伽(ゆが)として瞑想法が伝来
● 1919年〜 中村天風がヨガから応用した心身統一法を考案
● 1940年代〜 三浦関造がハタ・ヨガ指導者の草分けとして貢献
● 1958年後〜 沖正弘による「沖ヨガ」にて日本ヨガ協会設立
● 1966年〜 大阪大学名誉教授の佐保田鶴治がヨガ・スートラを翻訳
● 1970年代〜 第一次ヨガブーム到来(エクササイズとしても一般普及)
● 1980年〜 第1回国際総合ヨーガ世界大会開催
● 1995年〜 オウム地下鉄サリン事件によるマイナスイメージでヨガ人口が一時激減
● 2003年以降〜 第二次ヨガブームとして、ハリウッドセレブによるヨガが日本到達
● 2004年〜 日本最大級のヨガの祭典「ヨガフェスタ」第1回目開催
● 2010年代〜 国内ヨガ人口が100万人を突破
意外にも、平安時代にはヨガが紹介されていましたが、一般普及するという流れには至らなかったようです。
その後、一時的にマイナスイメージによる風評被害も受けてきましたが、現在は再起しています。
海外セレブによる影響で著名人がヨガを実践し始め、それに憧れる若い女性を中心にブームが起こりました。
美容・ダイエットのエクササイズとしてPRされたことが理由です。
女性の関心を惹き、徐々にインストラクターも養成できる仕組みができあがっていきます。
やがて男性へも普及し、自分のペースで取り組めるエクササイズとして認知されました。
2010年以降はホットヨガのブームも到来し、その支持率は世界的にも珍しい現象とされています。
約5000年前から絶えることなく育まれて継承されてきたヨガは、近年、女性を中心にブームを起こしてきました。
本来のメソッドは、男性向けで修行者にフォーカスされたものでしたが、今ではヨガスタジオが駅周辺には必ず点在するほど身近な存在です。
女性へヨガが普及するきっかけは、現代のヨガの父クリシュナ・マチャリアによる貢献度があります。
まだ100年模型化していないのに、欧米ではセレブ達が着目し次第に一般化しました。
男性に特化した古典ヨガも次第に刷新され、現代ヨガでは進化し続けています。
今ではエクササイズの代表格として認知され、女性インストラクターも増加中です。
ヨガは長い歴史と遍歴を重ねながら多様化してきました。
しかし目的は1つだけで、それは4000年以上経っても変わりがありません。
それは、心身ともに鍛えながら自分と向き合い、真実を見つける悟りの一種です。
ヨガは、ヨガ・スートラ、バガヴァッド・ギーター、ハタ・ヨガなどを軸として、歴史を繰り返しながらも、結局は「内なる自分を探求する」目的であることを理解しましょう。
ダイエット・エクササイズ・精神鍛錬など個人差はありますが、続けていくことでますます自分らしさは何かを探したくなっているのであれば、きっとヨガの本来の目的にも目醒めていると思ってよいでしょう。
今では、あらゆるヨガの方法論を確立しています。
ただし、どのヨガも古典的内容を継承し現在にまで受け継がれてきました。
最初の取り組みとして、ダイエットやエクササイズなど表面的な目的で構わないでしょう。
次第に効果が表れてくれば、ますますヨガに魅了されていくと思われます。
その頃には、単なる手段としてではなく、自分を見つめ直し人生を切り開くための哲学的なものとして、改めて真面目に勉強をしていけば、一層ヨガを深堀りできるでしょう。
ぜひ、ヨガを自分のものとして、未来に向かってマスターしていってください。