ヨガのほとんどの場合、床や地面についておこなうものですが、中には変わった方法論で展開するヨガも存在します。
その代表格といえるのが、エアリアルヨガと呼ばれる流儀です。
古代インドの時代からある一般的なヨガと比較しても歴史が浅いものですが、現代ヨガの中から誕生した、さらに新しいスタイルのヨガといえるでしょう。
古い考え方をリスペクトしながら、新しい発想でおこなう点が注目されています。
本記事では、エアリアルヨガについての詳しい概要を中心に紹介しながら、その効果や基本的なポーズなどを解説していく特集です。
エアリアルヨガをおこなう上での注意点にも言及しました。
エアリアルヨガの興味がある人はぜひ参考にしてみてください。
エアリアルヨガとは、ハンモック天井から吊るしておこなう最新ヨガスタイルです。
主軸とされているにはハタヨガで、ヨガインストラクターが考案するものもあれば、ダンスパフォーマーが考案したフィットネスタイプに接近している要素を含んだものもあります。現代的で自由な発想によるヨガです。
エアリアルヨガの発祥はニューヨークで、1991年にブロードウェイダンサーおよび体操選手だったクリストファー・ハリソン氏が考案した、ハンモックを使う「アンティグラビティフィットネス」がルーツとされています。
やがて2006年になると、ミシェル・ドルティニャックという人物によって改良開発されて有名になりました。
伝統的なヨガのポーズとピラティスやダンスの要素が加わり、最大の特徴となるハンモックを使用するという画期的なものです。
まずは先端をいくニューヨーカー達、セレブ、ビジネスパーソンなどに噂が広まり、フィットネスやダイエットに関心が高い人々を中心に、世界50ヵ国以上に広がっていきました。
一般的にはエアリアルヨガと呼びますが、実は呼び名が多岐にわたって存在するのも特徴の一つです。
日本では他にも、空中ヨガ、ハンモックヨガ、反重力ヨガ、無重力ヨガ、ぶらさがりヨガ、エアロヨガ、エアヨガ、フライングヨガ、ファブリックヨガ、スリングヨガ、シルクヨガ、ウーナタヨガという呼び名があります。
それだけ方法やメソッドが独り歩きし独自開発されていったものと考えられるでしょう。
エアリアルヨガをおこなう場合には、とくに専用ウェアがありません。
ハンモックを吊るした状態の中でポーズを作るため、なるべく摩擦が生じにくいウェアを選ぶようにすればよいでしょう。
ハンモックを使って逆さまな状態になることも多々あり、腕や脚に擦れるためです。
袖があり、伸縮性があって脚全体を覆えるような格好がよいかもしれません。
エアリアルヨガが他のヨガと違う点は、床や地面でおこなうのではなくハンモックを使用しておこなうことです。
天井から吊るした布にぶら下がり、逆さまになるなどポーズをとりながら、筋肉や関節の柔軟性を高めていきます。
高度なヨガのように思われますが、体が硬い人でも比較的チャレンジしやすいものです。
エアリアルヨガ最大の特徴ともいえるのが、ハンモックに乗ってアーサナをする方法です。
使用されるハンモックは、一点吊りと二点吊りがあります。
動作やアーサナについては、一点吊りと二点吊りとでは異なっているのも特徴です。
扱いやすさなどのメリット・デメリットもあります。
使用する素材は、網状のものや伸縮性のあるものなど多様です。
長さは天井高によって調整します。
エアリアルヨガで使用するハンモックは一般的にナイロン100%のもので、サイズは5m×2.8mを標準とします。
スタジオの規模や環境でも若干異なってくるでしょう。
ハンモックの耐久性は、最大で900kgもの重さに耐えられます。
かなり安全性も高いので心配は要らないでしょう。
初心者であれば、左右固定された二点吊りが扱いやすいとされています。
一点吊りは天井高が高いと揺れが大きくなり、体幹がより鍛えられるのがメリットです。
どちらがよいかは、経験値の度合いによって決めるとよいでしょう。
エアリアルとは「空中の」という意味の形容詞です。
その名が示すように、空中でのヨガとして開発されました。
天井には専用の梁があり、そこから吊るされたハンモックにぶら下がりながらレッスンします。
そのため浮遊感が演出され、ヨガのアーサナをおこなうことにより、独特な世界観が味わえます。
一般的なヨガと比較して、関節や筋肉が硬い人にも取り組みやすいメリットが生まれます。
たまに耳にするのが、エアリアルヨガの危険性についてです。
一般的なヨガと比較しても、空中でアクロバティックにアーサナに取り組み、足元が地についていないため、安定性がないことが示唆されています。
結論を言えば、危険だと思い込む必要はありません。
正しいテクニックや安全な方法を守ることで、ヨガ初心者でも簡単に取り組めます。
ただし、ルールを守っておこなわないとケガや事故のリスクが高まることは確かです。
また、自己流でやろうとはしないよう気をつけましょう。
適切な姿勢や動作の確保ができなくなり、リスクが高くなります。
慣れてくるとチャレンジしたくなるものです。
その際も、限界を超えようとしない謙虚な気持ちで取り組んでください。
一般的ヨガとは異質なエアリアルヨガには、どのような効果が期待できるのでしょうか。
ここでは、エアリアルヨガにおける、おもな効果について解説していきましょう。
おもに以下の4つの効果が期待できます。
● 筋力の向上と姿勢改善になる
● 代謝が高まり冷えやむくみの解消になる
● 柔軟性が高まる
● 内臓下垂や骨盤の矯正ができる
● リフレッシュできる
エアリアルヨガは天井から吊るされたハンモックの作用を利用し、全身のバランスをとりながらおこないます。
そのため、複数のアーサナで全身の筋肉を使い、あらゆる筋力の向上になるでしょう。
体幹やインナーマッスル強化にもつながります。
アーサナを一定時間バランスを保ちながらキープすることで、きれいな筋肉強化ができるのがメリットです。
また、ハンモックの揺れが、負担を掛けずに体幹を鍛えることになり姿勢を改善してくれます。
エアリアルヨガは血行促進に役立ちます。
血行が促進されれば、血液やリンパ液、酸素が全身に行き渡り冷えやむくみの解消にもなって基礎代謝を高めることが可能です。
ハンモックの布に包まれながらおこなうことにより、余計な力が抜けて筋肉や関節に無理な負荷がかかりません。
同時にリラックス効果も得られます。
また、酸素が全身に巡るので冷え性や肩こりの症状、むくみの解消にもなるでしょう。
デトックス効果が高まり、ダイエットにつながるという好循環を生んでくれるのがメリットです。
エアリアルヨガは、体の柔軟性を向上させることが可能です。
ハンモックの力によって、体を通常より伸ばすことができ、地上でのヨガよりも負担が少ないため、全身を無駄なく動かすことができます。
ヨガの初心者や体が硬い人などに最適な方法といえるでしょう。
より関節や筋肉が伸びる意識が高まり、体の柔軟性が向上します。
エアリアルヨガは骨盤矯正や内臓下垂の改善にも役立ちます。
ハンモックを利用した逆さまのポーズがしやすく、下垂した内臓を正常置に戻すことや、骨盤を締める効果が期待できます。
猫背などで背骨が詰まっている場合も、正常な位置に戻す効果が期待できるでしょう。
内臓下垂の場合、胃下垂や腸下垂の2つがあり、ぽっこりお腹の原因として女性にとっての大敵でもあります。
日常とは違った環境で姿勢を戻す意識が高まり、自然と正常値を目指して身体が反応してくれるでしょう。
エアリアルヨガの効果として、やはり外せないのが「楽しい」という感覚です。
おそらく初めて体験すると、非日常的な動作ばかりなので、夢中になって取り組めることでしょう。
気がつくと時間も経過していて、自然と血行が高まり心拍数も上がっています。
心身ともにリフレッシュした感覚になっているはずです。
インストラクターの指示に従って進行すれば、難しいことはほとんどありません。
さらにもっとやってみたい意欲が生まれます。
上達すればするほど達成感を得られるのも魅力です。
無趣味でやることがないと悩んでいるような人にこそ、是非チャレンジしてもらいたいヨガといえます。
エアリアルヨガでおこなえるアーサナ(ポーズ)は多数あります。
どれも空中にておこなうヨガなので、通常のヨガとは異質な独自のポーズです。
ここでは、初心者でも比較的実践しやすいものを厳選してご紹介しましょう。
これから、エアリアルヨガを始めたいと考えている人は、予習のつもりで参考にしてみてください。
ダウンドッグは、ヨガの代表的なポーズの一つとして知られています。
地面に手足をついた状態でおこなえるので、初心者でもバランスが取りやすく覚えやすいものです。
ハンモックを腰に当てお尻をサポートをすることで、背骨や腰が伸びてくれます。
腕への負担が少なく、肩や腕に痛みがある人などにおすすめです。
全身の筋肉を活性化させ、疲労回復にも効果が期待できます。
● ハンモックを腰のあたりに引っ掛ける
● 肩幅くらいに両手、骨盤の下に膝がくるように四つん這いになる
● より両手を手のひら一枚分前に移動させ爪先を立てる
● 手で床を捕らえて息を吸いゆっくりと吐きお尻を上げる
● 背中を伸ばし鼠径部を天井に引き上げる
● そのまま3〜5回呼吸する
バタフライは逆立ちのポーズで、 おもに股関節の柔軟性アップ効果が期待できます。
脚がまるで蝶の羽のように見えることで名付けられました。
下半身の筋肉がストレッチされます。
エアリアルヨガの中では、中級者向けのポーズでもありますが、逆さまになる非日常的な感覚を知るのに良い方法です。
体幹を意識しながら足を伸ばすようにおこなってみましょう。
最初は無理をせず、徐々に慣れた頃に取り組んでみてください。
● ハンモックに座った状態から始める
● 両足を開いて布を太ももに引っ掛ける感覚にしそのまま逆さになる
● 両手を床について安定させ逆立ち状態をキープする
エアリアルヨガの各種ポーズの中でもかなりポピュラーなアーサナがスパイダーマンです。ハンモックを利用しながら逆さまになります。
このポーズをおこなうことで背骨を開いて、脊柱にかかった圧力を軽減される効果が期待できるでしょう。
そのため、血流促進、腰痛改善などにつながります。
● まずはブランコのように布に座った状態にする
● 布の両端をしっかり握る
● 脚を広げながら後ろへ傾いて逆さまになる
スパイダーマンのポーズからさらに変化をつけたものがウィッシュボーンです。
床に手をついて上体を起こしストレッチします。
まるで逆さまでバンザイをしているような状態です。
ウィッシュボーンは、肩甲骨から首の後ろが伸びてくれます。
● スパイダーマンのポーズをとる
● 両手を床につける
● 背骨を伸ばしながら体を起こす
ウンブは「子宮のポーズ」とも呼ばれています。
自分の内側に意識を集中させる瞑想のひとつです。
まるで子宮の中の赤ちゃんに還った気分で、リラックスしながらおこなうことが望ましいでしょう。
全身をハンモックで包み込み、安心感が芽生えてきます。
布の外を遮断している感覚で、自分自身と向き合うことを目的としているポーズです。
● ハンモックに腰かける
● 布の中で両足を開く
● 膝を軽く曲げ足先まで布で包む
● 足と目を閉じながら意識を自分の内側へ向ける
ヨガ自体にさまざまな戒律や考え方があり、一定のルールに則っておこなわれます。
エアリアルヨガはハンモックをつかった非日常的な方法を用いるので、さらに注意すべき点が増えていると考えておきましょう。
ここでは、エアリアルヨガにおいて、安全性を保つために守るべき注意点を解説します。
エアリアルヨガのやり方は、布の中で揺れたり逆さまになることが多いので、健康上支障が考えられることがあります。
例えば、病気ではなくとも三半規管が弱い、あるいは乗り物酔いをしやすいタイプは注意が必要です。
他にも、高血圧、骨粗しょう症、心臓疾患がある人、妊娠中の人、ケガをしている人などは、自己判断だけでおこなわないようにしましょう。
あらかじめかかりつけの医師、専門家、インストラクターへ相談して判断に従うことです。
エアリアルヨガはハンモックでおこなうヨガで、足元から離れる機会が増えます。
自分がレッスンする位置・ポジションには、ものを置かないようにしましょう。
例えばペットボトルなどは、足元に置いてあると意外と危険です。
所定された場所に置くといったルールがあるはずなので、そのとおりに従ってください。
また、落下する危険のある所持品ももちろん身につけてはなりません。
とくにスマホ依存になっている人は、絶対持ち歩かないように気をつけましょう。
エアリアルヨガをおこなう時間帯は、食事の時間にも気をつけましょう。
少なくとも食後すぐにはレッスンを控えることです。
2時間以上空けてからおこなうような配慮をしましょう。
逆さまになることが多いので、気分が悪くなってしまう場合が考えられます。
そのような時には、むりをせず少し休憩をすることです。
頭を下げて冷たいドリンクを飲むと比較的回復が早くなることがあります。
エアリアルヨガをする際は、服装に気をつけることが大切です。
通常のヨガポーズでも四肢を伸ばすなどの、日常生活異常に可動域を広げることが多いのですが、それ以上にエアリアルヨガは身体を使います。
あまりにも締め付けが強い服装、伸縮性のない素材のウェアでは不適合です。
程よく身体にフィットして、集中力を妨げないためのウェアを選ぶようにしましょう。
選ぶ際には、袖のあるウェア・長ズボンなど露出の少ない服装が一般的です。
エアリアルヨガの最中は、ウェア以外のものは一切身につけないようにしましょう。
理由は、ハンモックが裂けるといった危険から守るためです。
ピアス・ネックレス・指輪・ベルトなど、金属類は外しておこないます。
布が傷つく危険性を避ける意味で、ジッパーなどの金具の付いたウェアも厳禁です。
また女性の場合、爪が長い人もいるので、保護のための滑り止め付手袋を着用するといった配慮をする施設もあります。
エアリアルヨガへの注意点ではありませんが、デメリットと考えられることがあります。
それは、まだエアリアルヨガの歴史が浅いこともあり、実践できるスクールや教室・講座を見つけるのに苦労するかもしれません。
一般的なヨガのインストラクターは増加中ですが、特殊な方法なのでインストラクター自体がまだまだ少ないようです。
そのため、思い立ってすぐにやろうとしても、可能な施設を探すことから始めなくてはなりません。
逆に言い換えれば、指導者が少ない分野なのでしっかりマスターしていけば、インストラクターとしての需要は高く、将来性もあって狙い目でもあります。
エアリアルヨガは、とくに身体の硬い人、ヨガ自体が初心者の人に最適です。
ハンモック状になった布に包まれると、なんとなく安心感が出てくるのが魅力とされています。
そのため、自然とリラックス効果が期待でき、その意識のまま実践することができるでしょう。
なかなか普段からすぐに取り組めるものではありませんが、一度始めてみると継続しやすいヨガの流派でもあります。
いつも以上に身体が伸びる感覚もわかってきます。
エアリアルヨガは、リラクゼーション・ストレス解消・柔軟性向上など、一般的なヨガと同じ効果を目指せながら、かつ難易度が低い点もメリットです。
しかし歴史の浅いこともあり、近辺でレッスンをしている施設を見つけることができるかどうかがポイントとなるでしょう。
もしうまく見つけられたら、一度体験レッスンなどに積極的に参加してみることをおすすめします。
ハンモックの安定感と非日常性を体験すれば、きっとやみつきになることでしょう。
ぜひこの機会に、近くの教室を探してみてください。