
ピラティスとは、ドイツ人のジョセフ・ハベルタス・ピラティス氏が考案したエクササイズです。
現在では世界中で親しまれているエクササイズとして、ヨガともよく比較されています。
元々は、病弱だったピラティス氏自身がその克服を目的として、あらゆるスポーツや治療法を研究して組み合わせ体系化させました。
本記事では、ピラティスの概要を中心にした特集です。
ピラティスを実施した際の効果やその目的、一般的なヨガとの違い、よくおこなわれているピラティスでの初心者向けのポーズなどを解説していきます。
これからピラティスをやってみたいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
ピラティスは、1920年代にドイツ人看護師だったジョセフ・ハベルタス・ピラティス氏により、第一次大戦での負傷兵のリハビリのために開発されたエクササイズです。
元々は、病弱だった自分のケアを目的にしていましたが、その効果が認められて徐々に拡大していきました。
体の深層部にあるインナーマッスルが強化され、体全体のバランスの調和に役立ちます。
とくに女性からの支持が高く、美しくしなやかな姿勢と健やかな体作り、健康促進のための効果が期待されています。
ピラティスの実践では、大きく「マットピラティス」「マシンピラティス」の2種類が現在主流です。
では、それぞれについて解説していきましょう。
マットピラティスは、床にマットを敷いて実践するピラティスです。
見た目は、ほぼヨガの動きにも近く、全身を満遍なく効率的に鍛えることができます。
ゴムベルト・ローラー・バランスボールを活用することもありますが、道具はほぼ使用しないため、マットがあれば全般が可能です。
また、マットピラティスは自宅で気軽にできる点が魅力で人気が高い方法です。
マシンピラティスは、専用のマシンを駆動させておこなうピラティスです。
マシンは目的に応じて使い分け、500〜600種類もの多くのエクササイズが実現できます。
身体への負荷も調整できるため、マットピラティスよりもパフォーマンス向上に役立つでしょう。
ただし欠点は、大掛かりな装置になるので置ける規模が限られ、一般的にはスタジオでの使用となります。
自宅で気軽に実践できません。
ピラティスでのエクササイズは、ポイントを押さえて正しく実践すれば、高い健康効果を生み出すことが期待できるでしょう。
健康効果のために押さえるべきポイントは3つに大別できます。
ここでは、ピラティスの実践によって健康効果を発揮するための3つのポイントを解説しましょう。
● 骨や関節を正しく調整する
● 胸式呼吸で血液循環をよくする
● コアな筋肉群を意識したエクササイズをする
ピラティスを実践しながら、本来の正しい骨や関節の位置や可動域を意識しましょう。
骨や関節が正しくない姿勢、悪い姿勢では、筋肉も正しく使えないのでバランスよく鍛えることができません。
そのため、ピラティスを始めた当初は、仰向けや座った状態など静止した時にこそ、骨や関節が正しい位置にあり、姿勢の均衡さが保たれているかを意識しながら実践する必要があります。
最初は違和感があるかもしれませんが、繰り返し実践すれば次第に正しい位置に戻っていくでしょう。
ピラティスでの呼吸法は胸式呼吸を採用しています。
肋骨と肋骨の間が広がっていくイメージをしながら上半身で息を吸い、肺の中の二酸化炭素がなくなるまで口から息を吐き出す方法です。
このイメージでおこないながら、血液・リンパの流れをよくしていきます。
自律神経調和にも役立つので、エクササイズ向上とともに相乗効果が実感できるでしょう。
ピラティスのエクササイズでは、体幹・インナーマッスルを鍛えるものと思われがちです。これは正しく言い換えると、脊柱を安定させている横隔膜・腹横筋・多裂筋・骨盤底筋群・の「4つのコア」を意識して動かしています。
これからピラティスを始めるにあたって、4つのコアな筋肉を常に意識しながらエクササイズを実践していくことが大切です。
ピラティスでは、インナーマッスル・体幹などを鍛えながら健康的な身体作りを目指す目的がありますが、ヨガでは呼吸法や瞑想とも関連があり、心と身体を結び付け安定した状態にすることが目的です。
ここでは、ピラティスとヨガの成り立ちなどを含めた違いについて紹介します。
ピラティスは、ドイツ人のジョセフ・ハベルタス・ピラティスが考案したエクササイズだと先述しました。
虚弱体質改善のために、さまざまな治療方法やスポーツから考案したエクササイズが主流の考え方といえるでしょう。
捕虜になった仲間の兵士のために、寝たままでも体力回復・リハビリができるようにと工夫されています。
やがてニューヨークのダンサーに受け入れられ、現在へと受け継がれていきました。
一方、ヨガの場合は約4500年前の古代インドの時代にまで遡ります。
仏教・ヒンドゥー教が起源とされ、ピラティスよりも相当長い歴史がある修行法です。
呼吸法や瞑想も関係し、心身を結び付け安定した状態にすることが目的となります。
エクササイズよりも呼吸法とポーズの連携が重要視され、心の調和のためにおこなうものとされてきました。
ピラティスとヨガを比較する場合、双方が辿り着こうとする目的そのものに違いがあります。
精神の修行法として捉えているのがヨガで、リハビリを目的として誕生したのがピラティスです。
近年のヨガはアメリカで広まっていき、宗教的思想が徐々に薄くなりました。
そのため、ピラティスと同じように健康法のひとつとして、実践する人のほうが多いかもしれません。
ただし、全く精神性を排除したわけではなく、自分自身と向き合うことも大切にする根本的思想に変わりはありません。
あくまでも実践的な効果だけを求めるのならピラティスがおすすめですが、もっと深い哲学や思想にまで委ねてみたいと考え始めたのなら、ヨガにもチャレンジしてもよいでしょう。
ピラティスとヨガでは呼吸法の在り方に違いが顕著です。
まずヨガの呼吸法では、腹式呼吸をメインとし、リラックス効果を高めるためにおこないます。
腹式呼吸は、お腹をふくらませながら横隔膜を下げるイメージで息を吸い、お腹をへこませながら吐いていく方法です。
鼻から吸い口から吐く(鼻から吐くこともある)ことが一連の流れになっています。
腹式呼吸で副交感神経を優位にするので、リラックス効果を得られるとされているのです。
ピラティスの呼吸法の場合は、胸式呼吸を活用します。
胸を膨らませて肋骨を前面や背面、横に広げる感覚で深く吸います。
吸うときは口からという方法です。
交感神経を優位にする働きがあり、脳の活性化や集中力向上につながります。
ピラティスとヨガでは、取り扱う備品やツール・アイテムも少し違ってきます。
特に顕著なのが床に敷くマットです。
一見すると同じもののように思われますが、作りが全く違います。
一般的なヨガで使用するマットは、薄くて滑りにくい構造になっていて、ヨガポーズをキープしやすいように考えられた設計です。
他にも、ヨガベルトという布製ベルト、ヨガブロックという軽いブロック式の敷物があります。
ピラティスの場合は、ヨガ、マットよりも厚みのあるマットになるでしょう。
これは背骨の保護のためです。
寝転んだり横向きになるなどの動きが多いため、硬い床に当たった際の痛みの緩衝材としての役割があります。
他にも、セラバンドと呼ばれるゴム製バンド、マジックサークル、バランスクッションなどの専用アイテムもあり、TPOに合わせて活用することになるでしょう。
ピラティスでは、姿勢改善をメインにしたボディバランスのために体を動かすことになります。
また、集中しておこなえば自分と向き合う時間ができるのも特徴です。
ある程度の時間経過を見計らう必要があるでしょう。
仮に、今すぐに体重を落としてダイエット効果を期待している人には向いていません。
他にも、ピラティスは特徴から見て向いている人と向いていない人に大別されることになります。
まずは、ピラティスに向いている人のタイプを解説していきましょう。
● 姿勢改善が主体な人
● 論理的思考ができる人
● 体を動かすことが好きな人
● 自分と向き合う時間を持ちたい人
今現在の自分の姿勢を改善したいと真剣に考えている人におすすめできます。
ピラティスは、体のインナーマッスルや骨を意識した動作です。
正しい体の動かし方や力の方向などを見出せるので、次第に姿勢が改善されていきます。
筋肉が伸びて猫背などが改善されることで、血流促進も働き自然と体調もよくなっていくことでしょう。
ピラティスは論理的に考えられる人におすすめできるでしょう。
ヨガの要素も取り入れ、解剖学に基づいたエクササイズです。
つまり、各エクササイズの動きには根拠があり、なぜそうするのかを論理的にも解説できるとされています。
ピラティスは、スピリチュアルや宗教的な意味合いからではなく、体系化されて論理的思考から成立されているエクササイズです。
ピラティスは普段から運動が好きという人に向いているでしょう。
体幹強化や関節の可動域を広げるエクササイズでなので、スポーツのパフォーマンス向上に影響します。
身体機能強化・柔軟性向上といった効果を期待したいという前向きなアスリートにこそ取り組んでほしいエクササイズです。
野球やサッカーなどのプロアスリートの中には、トレーニングの一環としてピラティスを取り入れている選手もたくさんいると聞きます。
ピラティスは、自分を取り戻す時間がほしい人におすすめです。
現代人はさまざまな事情に追われ、息をつく時間がありません。
ピラティスでは、エクササイズをしながら筋肉や骨を意識し、体の微妙な動きに合わせて呼吸もします。
自分の体を見つめ直し、自然と内面にも到達していることが多くなるでしょう。
ヨガからの影響を多大に受けていることも関係しているからです。
ここでは逆に、ピラティスに期待をしないほうが無難なタイプ、向いていない人の特徴を解説していきましょう。
以下の3つに該当する人は、過剰にピラティスへの期待をしないことが望まれます。
● ダイエット効果に急いでいる人
● 筋トレ肥大を期待している人
● 体調不調や既往症がある人
すぐに体重を落とせるダイエット効果を期待する人は、ピラティスに向いていません。
ピラティスには即効性がありません。
わずか数回のレッスンに通っただけで減量に成功し、体型が変化する効果は得られないと思われます。
個人差があるので一般的な基準よりも早い効果が出る人もいますが、3ヶ月程度継続した段階での測定結果で判断することが望ましいでしょう。
長期でゆっくり成果を出すことがピラティスの特徴なのです。
ボディビルディングなどの筋肥大を目的にする人にも、ピラティスはおすすめできません。
ピラティスのトレーニングは体幹・インナーマッスルを鍛えるためにあり、ボディラインを整えるエクササイズだからです。
体の深い部分の筋肉強化にはなりますが、上腕二頭筋などの表面的な筋肉を大きく見せるための訓練ではありません。
もちろん筋トレをしている人が、別メニューとしてピラティスを導入すること自体に問題はないでしょう。
見せるための筋肉へのアプローチとは、別な考え方で導入してください。
明らかに普段とは違って体調不調を感じている場合には、ピラティスはおすすめできません。
ピラティスでは筋肉や関節を動かすエクササイズなので、とくに膝や股関節に深刻な不調があれば、余計に悪化する可能性も考えられるのです。
過去の古傷による痛みなどを抱えている場合も該当するでしょう。
まずはピラティスの実践が可能かどうかを、専門医に相談してから検討することです。
ピラティスを始めるにあたっては、難易度の低い基本ポーズを知って、次第に慣れていくように心がけましょう。
ここでは、ピラティス初心者が取り組みやすいおすすめのポーズを紹介します。
無理をせず徐々に慣れていってください。
ピラティスを学ぶ上で、必ず最初に登場するのがニュートラルポジションです。
背骨の自然なカーブをそのまま維持する状態を指します。
安定しやすい普通の姿勢ですが、腰の部分が前方にややカーブし、背中の部分がやや後方にカーブした状態になっています。
● 両ひざを立てながら仰向けになります
● 手のひらを下に向け、腕を伸ばして床に置きましょう
ペルビックカールは、骨盤や背骨などを中心に姿勢の改善に役立ちます。
背骨の一つ一つを動かすイメージをしながら臀部を持ち上げるエクササイズです。
ピラティス初心者でも取り組みやすいのが特徴です。
骨盤の後傾やニュートラルポジションを意識しながら実践すると、歪みを理想のS字カーブに戻す効果が期待できるでしょう。
● 仰向けになり脚を立てましょう
● 腕を真っすぐ伸ばし床につけます
● 息を吐きながら肩から両ひざまでが一直線になる感じでお尻を持ち上げましょう
● 息を吸い、吐きながらお尻を床に下していきます
● 数回繰り返しましょう
ピラティスに限らずあらゆるエクササイズにおいて、プランクは有名なポーズとして知られています。
体幹を強くすることで、姿勢の調整、おなかの引き締め、基礎代謝アップなど、さまざまな効果が実証されてきました。
● 四つん這いで両肘を肩の真下につきましょう
● 息を吸い、吐きながら片足ずつ膝を伸ばし身体を浮かせます
● 10回呼吸を基準に、両手両つま先で体勢をキープしましょう
ピラティスのポーズの中で、腹筋への直接的な効果が期待できるのがハンドレッドというエクササイズです。
とくに腹横筋へのアプローチが利くとされ、ぽっこりお腹が気になる人は、このエクササイズを習慣的におこなうことをおすすめします。
● 仰向けになり両ひざを立てましょう
● 90度曲がった状態で脚を上げます
● 脚を上げた状態で上半身を起こしていきましょう
● ちょうど体全体がV字になるよう脚を伸ばします
● 5回呼吸を意識し、体勢を維持しましょう
ピラティスの基本ポーズの一つにテーブルトップと呼ばれるポーズがあります。
仰向けに寝て股関節と膝を90度に曲げた状態が基本となり、他の動作のアレンジを加えることができるものです。
ここではツイスト(ねじり)の動作が入っています。
腰がマットから浮かないように心がけてください。
● 仰向けになり片足ずつ持ち上げましょう
● 両ひざを90度に曲げて両腕をハの字に広げて床につけます
● 右方向にお尻を持ち上げ中心に戻しましょう
● 今度は左方向にお尻を持ち上げ中心に戻します
● 左右5回繰り返すしましょう
ここでは、よく聞かれるピラティスに関する素朴な疑問について特集しましょう。
これからピラティスを始めたいけど不安があるという人は参考にしてみてください。
ピラティスは生理中でも実践が可能です。
血流が改善され、骨格のゆがみにも効果的なので、生理痛緩和も期待できるでしょう。
ただし条件としては、経血の量が多い時期や生理痛が重い場合、血液量が増える予想がされますので、体調を観察しながらやってみることです。
なるべく強度の低いエクササイズを選択しながら、腹部への負荷が強くなりすぎないように注意しましょう。
ピラティスは体幹を強化するエクササイズが中心なので、初心者、年配者にも楽しんでもらえるでしょう。
インナーマッスルを鍛えれば腰痛改善、基礎代謝アップなども期待できます。
もし、腰痛でお悩みであれば一度チャレンジしてください。
また、普段よりスポーツの習慣がありパフォーマンス向上、集中力向上をさせたい人にも最適です。
ピラティスは空腹状態の時におこないましょう。
満腹状態でのエクササイズは消化不良を起こす原因になりやすいからです。
これはピラティスに限ったことではなく、ヨガや筋トレなどあらゆるものにも通用します。
ピラティスでは、体幹を鍛える姿勢が目立つので、食事は2時間前までに済ませるようにしましょう。
もし激しい運動をしてめまいや倦怠感などの症状があれば、プロテインバーやゼリー飲料など消化吸収のある軽食を速やかに摂ることです。
ピラティス後には、タンパク質・炭水化物・ビタミン・ミネラルなどをバランスよく摂取すると相乗効果が期待できます。
少なくとも疲労回復度が高まり、疲れを引き摺らずに済むとされているからです。
ピラティスの前後では、1~2時間は空けてから食事を心がけましょう。
ピラティスは、骨格や筋肉を意識したインナーマッスル強化のためのエクササイズとして開発されました。
胸式呼吸とともに身体全体のバランスを整えることが期待できるでしょう。
また、マット1枚分のスペースがあれば、自宅でも一人でエクササイズが可能です。
もっと専門的な内容、正しい動きや呼吸法を習得したくなった場合は、スタジオや教室に通うことも検討しましょう。
場所によってはマシンピラティスでのエクササイズも体験できるので、負荷を調整しながらチャレンジできます。
初心者でも受け入れやすいエクササイズなので、ぜひチャレンジしてみてください。